イミテーション彼氏 ~幼なじみと嘘恋愛~



陽太はわたしをリビングでちょっと待っててと言って、洗面のほうに向かって行った。

どうしたのかと思ったけれど、大人しく待つ。


十数分後、陽太は戻ってきた。

「……え……!?」


だけどその髪は真っ黒で、黒ぶちの眼鏡をかけていて。

服も、いつもの制服とは違うシャツを着ていた。


「これならぱっと見俺とはわかんないでしょ」


そう言っていたずらっぽく笑った陽太。

だけどその言葉も耳に入らないくらいに、わたしは冷静じゃなかった。


心臓がうるさい。

顔が熱い。


……わたしが好きになった陽太だ。

わたしが好きになった、8年前の陽太だ。


陽太は動けなくなってしまったわたしに気づかないのか、まっすぐわたしの近くにあったソファに座る。

そして……


「……ひゃっ!?」


ぐいっとわたしの腕を引っ張った。

突然のことに力が入らず、陽太の方へ倒れこんでしまう。