総統は運命の一枝も人の心も知覚できる一方で、学術を身に付けるためには、ごく当たり前の努力をしなければならないそうだ。
国立大学の文系学部を出たという割に、サイエンスの話題に食い付くことが多い。
ぼくは話のテーマをもとの軌道に戻した。
「この一枝も、淘汰される可能性があるんですね?」
「あるだろう。私には見えないけれども」
「どんな条件を満たすことができれば、適応度の高い解として評価され、この一枝を次の世代につなぐことができるんでしょうか?」
「さて、どうすればいいんだろうね?」
「総統にもおわかりにならないんですか?」
「私は、少し先の未来における最適解を知っている。しかし、一枝たちがディープラーニングをおこなう間、その過程はブラックボックスの中だ。
プログラムの設計を知る私にさえ、ブラックボックスを開けることができない」
「具体的に何がおこなわれているのか……いや、ぼくたちがこの一枝の上で何をおこなうべきなのか、わからない」
総統はうなずいた。
そして一つだけ、曖昧な予言をくれた。
「事件が起こるよ。きっと、すぐに」



