さよ子さんの話は回り道が多い。
要約すれば、以下のとおりだ。
明日、十九時から、玉宮駅前でストリートライヴがある。
さよ子さんが夢中になっているロックバンドの公演だ。
件のバンドは襄陽学園の五人組。
さよ子さんは、同級生と一緒に聴きに行く。
が、夜に女子だけは不安なので、ぼくが借り出される。
という、すでに五回は聞かされた内容を、今日もまた延々と聞かされているわけだけれど。
重点的に繰り返されるのは、ただ一項目。
そのバンドのヴォーカリストがカッコいい、ということだけだ。
彼の魅力を語るために、さよ子さんの言葉はすでに十二万字以上が費やされていると思う。
文庫本一冊ぶんだ。
さよ子さんが彼に一目惚れしたのはつい先週だというのに。
話題の彼とは会ったこともないけれど、ぼくはすでに彼に同情している。
こんな勢いで攻めまくられたら、いくら何でもドン引きするんじゃないだろうか。



