わたしは、黒い棺《ひつぎ》に横たわる眠り姫。
もしくは、アリスの悪夢の創造主。
棺のすぐそばに、みんな倒れている。
弟が最初に斃《たお》れて、しんとした。
誰よりも響く声でわたしを呼び続けていた弟。
わたしが弟を守るべきだったのに。
弟にはわたしの弱さを知られてはならなかったのに。
ごめん、来ないで。あんたにだけは見せたくないことだってあるの。
来ないで。ほかならぬあんただからこそ、来ないで。
わたしは拒んだ。
弟はわたしを呼び続けた。
わたしは応えなかった。
声を上げて上げて上げ続けた弟は、とうとう疲れ果てて力尽きた。
それで、わたしの張り詰めた糸が切れた。
わたしのココロが弟を殺したの。最低な悪夢。
守りたかったものが壊れてしまって、後はもうどうなったっていいと思った。