瑠偉が隣に来て、ぼくのカバンを引っ張った。
「ほら、言ったとおりだろ。ここに突っ立ってたら、下級生たちの邪魔になる。行こうぜ、海牙」
その途端、祥之助がハッと目を見張った。
「海牙って、あの阿里海牙?」
「フルネームの呼び捨てとはまた失敬ですね。まあ、何にせよ、ぼくのことをご存じでしたか」
「すみません」
「え?」
「知らないはずもありません。ボクはずっと、阿里先輩の影と戦ってきましたから。
阿里先輩が叩き出した成績に、文系科目の点数だけ辛うじて勝てることがあっても、総合成績では一度も勝つことができなかった。悔しいです」
めまいがしそうなほど、調子が狂う。
ぼくは祥之助から目をそらした。
「転校するそうですが。新しい学校でも頑張ってくださいね」
平板な言葉を、投げ付けるように放った。



