瑠偉にうながされるまま、ぼくは祥之助に近付いた。
人の間を縫って、中央の祥之助の前に立つ。
祥之助は、ブラウンの目を怪訝《けげん》そうにすがめた。
「誰だ?」
まるで初対面のような表情と言葉。
ぼくは祥之助の顔をじっと見る。
瞳孔の様子、まぶたの緊張感、異常な汗の有無。
もしも祥之助が一連の出来事を覚えているのなら、顔色が急激に変化するのが道理だろう。
ワックスで固めた髪も、手入れされた眉も、香水のような匂いも、イヤというほど向き合わされた敵の姿とまったく同じだ。
けれど、祥之助は妙に行儀よく小首をかしげた。
「失敬。その校章の色、三年生ですね。先輩がどなたなのか、存じませんが」
まさかの敬語。
しおらしい祥之助なんて、想像もつかなかったのに。



