ぼくは目を見張った。
水滴はみるみるうちに、黒い箱に染み込みながら一点に集まり、氷のように透き通って光を宿す。
そこに透明な一つの穴がうがたれた。
「鍵穴!」
驚いて、ぼくはリアさんを見つめ直した。
色のなかった唇が、かすかに朱い。
指を組み合わせた両手の下で、胸が、呼吸に上下している。
唐突に、とげとげしいチカラを真横から感じた。
祥之助の体で浮遊した黄帝珠が、ぼくの側面に回り込んでいる。
【今一度、問うぞ! その体、我に寄越す気はないか?】
「何度訊かれても、答えは同じです。絶対に譲らない!」
一瞬。
消えたと錯覚するほど、黄帝珠の動きが速い。
【寄越せ!】
つかみ掛かる手を、反射的に払いのける。
接近した顔を、振り上げた足で蹴り飛ばした。
「150mm未満までぼくに顔を寄せていいのは美人だけです!」



