「違いますよね」
つぶやいたのが自分の声だと、最初はわからなかった。
リアさんの怪訝《けげん》そうな目が、ごく近いところからぼくを見つめている。
「リアさん、違いますよね」
ぼくが口を動かすと同時に声が聞こえて、それが自分の声だと知って、ぼくは自分の気持ちを悟った。
せめぎ合う感情の中で、より強いのが何なのかを理解した。
「こんな茶番、本心じゃないんでしょう? 今までずっとそうやってきたんですか? そうやって自分をごまかして、すり減らしてきたんですか?
こんなの本心じゃないって言ってくださいよ。ねえ」
言葉にした途端、悲しくて、鼻の奥がツンとした。
憧れの人が知らない誰かに触れられたのだと思うと、つらい。
腹立たしくて、悔しくて。
それが大人の遊びだったとしても、本気の恋じゃなかったとしても、大事なものをけがされた気がして、ぼくの胸に身勝手な悲しみが湧いてくる。



