「リアさんの声?」
「来ないでとか、見ないでとか、そう言ってる姉貴の声。おれには最初っから聞こえてたんだけど、ここに来て、さらに大きく聞こえるようになった。だから、おれは行けない」
「でも、そんな……」
「行きたいよ。だけど、行けねーんだよ」
理仁くんは大きく三歩、下がった。
背中が扉にくっついた。
理仁くんは背中を扉に預けて、座り込んだ。
「ぼくは……ぼくが、ひとりで?」
何ができるというんだろう?
「その正直な顔してれば、だいじょぶだって。姉貴の母性本能、くすぐってやんなよ。海ちゃん、姉貴のこと助けたいでしょ?」
「助けたいですよ。助けてもらって、守ってもらって。このままじゃいられない」



