「声が止められなかったし、止めるべきではないと思いました。チカラに頼らないと言えないなんて、情けないんだけどね」


「やっぱ海ちゃん、姉貴のこと好きでしょ?」


「それは、いや……恋というものを、したことがないんです」

【胸が痛くて苦しい】



理仁くんが急に、低い鏡の天井を向いて声を張り上げた。



「とのことですよ~、姉貴! かわいい年下男子にキッチリ教えてやんなよ~」


「な、何言ってるんですか!」



思わず理仁くんの肩をつかむと、振り返った理仁くんはニヤッとした。



「ま、歩きながら話しますかね~」



鏡の迷路を、理仁くんは迷わずに進んでいく。


リミットまでの時間を尋ねたら、懐中時計を渡された。


残り時間は約四分の一だ。