扉の向こうは白い廊下だった。


病院だ。白いリノリウムの床に、道案内のカラフルな矢印が描かれている。


理仁くんがピンク色の矢印を指差した。



「入院病棟だよ。おれらが向かう先」



イヌワシとともに、理仁くんが先頭を歩き出した。



角を曲がると、リアさんが立っていた。


白いパンツスーツ姿で、キッチリと髪をまとめている。



「二年くらい前の姉貴だ。あのスーツ、病院に行くときはよく着てた」



リアさんは、一つの病室の扉をにらんでいた。


何かをつぶやく形に唇が動くけれど、音は聞こえない。


病室の表札を平手で叩いて、こちらに背を向けて歩き出す。


ハイヒールの早足で、白い廊下を遠ざかっていく。