煥くんも、理仁くんの空元気を痛々しく感じたらしい。
「泣きたけりゃ泣けよ」
理仁くんは手すりをつかんで歩き出した。
「そういうセリフは、女の子に言ってやんなよ。おれはもう平気。今までさんざん泣いてきたから。
てか、おれがセリフ言いたい側だゎ。姉貴って、おれの前では絶対に泣かないから」
足音もなく先頭を進みながら、煥くんは自分の銀色の髪をクシャクシャにした。
「弟の面倒見なきゃいけない人間は、そういうもんだろ。オレの兄貴も無駄に辛抱強い。絶対、オレには弱音吐かねぇし」
ぼくは最後尾から問い掛ける。
「文徳《ふみのり》くんでしたっけ。煥くんのおにいさん」