彼女は電話を切った。
スマホを耳から離した弾みで、ピアスが跳ねた。
先端に石が付いた細いチェーンが髪に引っ掛かった。
「ちょっと失礼」
ぼくは思わず、彼女のピアスに触れた。
小さな振り子の運動はキレイだった。
その動線を阻まれるのは惜しい。
彼女の朱っぽい髪を掻き上げた瞬間、彼女はかすかに体をこわばらせた。
髪と同じ色の目が、意外な近さで、ぼくを見上げる。
キスができそうなほどの距離。
というよりも、ぼくの仕草は、まるでキスを予告するかのよう。
違う。そんなつもりはなくて。
時間が止まった。そう感じた。



