そんなふうに、ぼくは今、潜っていく。


これがリアさんのココロなら、きっと湖よりも、はるかに深い。



――海牙くん。



こぽこぽと、こもったような澄んだような音が聞こえた。声だろうか。


遠くからかもしれない。耳元でささやかれたかもしれない。


距離なんて意味がないのかもしれない。



水のようなこの場所の温度は、ときどき冷たい。


本物の笑顔を見せないリアさんの、凍った怒りを思い出す。



――海牙くん。



【リアさん】



水が柔らかくて温かいときもある。


何度か触れた体は、そんなふうだった。


また触れたいと望んだら、怒られるかな。



心を見せたがらないあなたのココロの底に、ぼくはもうすぐ降り立つ。


この上なく無礼で卑怯なふるまいだ。


こんなぼくに、あなたは、どんな景色を見せてくれますか?



――海牙くん。



ぼくを呼ぶ声が聞こえる。



【リアさん】



ぼくも何度も、彼女の名前を呼んだ。