車は少し、獣の匂いがした。


運転手を務めるアジュさんは能力者だ。


運転中の今は人間の姿だけど、巨大な黒い犬の姿に変身することもできる。



通常、この時間帯は、アジュさんは犬の姿で夜勤だ。


庭に放してある警備用の犬たちを統率している。


人間の姿でも犬の姿でも、軽快な口調でしゃべってよく笑う、いたって気のいい三十代。



「武器や小道具が必要なら、持っていけよ。そのへんに載せてるやつは自由に使っていい」



警棒、ナイフ、メリケンサック、エアガン、スタンガン。


雑多な武器が頑丈なプラスチック製の箱に入っている。


ぼくはちょっと呆れながら尋ねた。



「見本市みたいですね。これ、どうしたんですか?」


「不良少年どもから巻き上げた」


「巻き上げたって?」