総統が静かに言った。



「車を用意してある。時間になったら、行ってくるといい。心を強く持って、くれぐれも気を付けて」



さよ子さんが、鈴蘭さんにギュッと抱き付いた。



「預かり手じゃなきゃ、行けないんだよね。鈴蘭、絶対に無事で帰ってきてよね? 昨日も、ほんとにすごく、心配だったんだからね?」



瑠偉がぼくにUSBメモリを差し出した。



「持っといてくれ。USBメモリのふりした別物なんだ。おれのPC宛てに、位置情報が送信される。

確実に何かの役に立つわけじゃないけど、待機してるだけのおれらにしてみたら、何でもいいから情報がほしいんだ」



ぼくは情報発信装置をポケットに入れた。


心配されていることも、情報が不安を和らげることも、痛いくらいよくわかった。