夕刻、総統の屋敷へ最初に到着したのは、さよ子さんと鈴蘭さんだった。


さよ子さんは初っ端から、普段以上にテンションが高かった。


「おかえり」と出迎えた理仁くんの前で甲高い声を上げて、はしゃいだ。



「理仁《りひと》先輩って、ほんとにカッコいいですね! 噂以上っていうか。ねえ、鈴蘭!」



鈴蘭さんもそわそわしていた。



「イ、イケメンがそろってるって、いいですよね。海牙さんもすごい美形だし!」



次に姿を現したのは、瑠偉だ。



「海牙、無事か? って、さすがに顔色悪いな。飯はちゃんと食えたか?」



ぼくが応対するより素早く、さよ子さんがテンションの高いままで瑠偉にまとわりついた。



「瑠偉くん、じゃなくて、瑠偉さん! 昨日はあんまりしゃべれなくて残念でしたっ。

ものすごーく誉めてる意味で言いますけど、若く見えますよね! カッコかわいい美少年ですよねっ!」


「いや、あの、とりあえず、どうも」



どこか達観した印象の瑠偉が、珍しくたじたじになった。