目を開けたら、見慣れた色のシーツがあった。


左を下にして体を丸めて眠る、いつもの癖。



でも、足りない。


目に入ってくるはずの、シーツのしわの形状を計測した数値。


そんな当然の情報が、ぼくの視界に存在しない。



【見えない】



失ったんだ。


この世に生を受けた瞬間からぼくに備わっていたチカラ、力学《フィジックス》。


過剰な情報量を持つ視界が、ぼくにとっての当たり前だったのに。



「おんや~、目ぇ覚めた?」



思いがけない声が聞こえた。


ぼくは、パッと起き上がった。



ぼくの部屋に、理仁《りひと》くんがいる。


彼は勉強机の椅子に後ろ向きに腰掛けて、背もたれを抱いていた。



「これは……ぼくたちは、一体……」


「一夜明けて、今は午後一時だよ。あの後さ~、おれと鈴蘭ちゃんで、もう必死。

海ちゃんとあっきーは気絶したまんまだし。四獣珠がバリア張ってくれてなかったら、ヤバかったよ」