小さな手のひらから青い光が染み出した。


光は、ぷくりと腫れた真っ赤な引っ掻き傷の上に広がって、白い肌をほのかに照らす。



それが鈴蘭さんのチカラだ。


鈴蘭さんは手のひらから癒しの光を出して、リアさんの傷を治療した。



ぼくはその情景から目を背けて、ローラースケートを装着した。


青い光は、解析できない情報の集合体だ。


見ていて気持ちのいいものじゃない。



鈴蘭さんの泣き出しそうな声が聞こえた。



「治せるのはここまでです。もう痛みが消えてしまった古い傷は、わたしには……」



ぼくは顔を上げた。


リアさんがジャケットを着込む直前、腕に幾条もの白い傷跡が走っているのを見てしまった。



その一連の出来事は、数十秒の間に起こった。


祥之助の乗った車が駅前の交差点の信号待ちを抜けるまでの、わずかな一幕だった。