* * *
「…どういうことですか?」
「え、怒ってる?」
「なんで言ってくれなかったんですか?」
「何のこと?」
「今日のことですよ!」
「え?」
知春はまったくピンときていない、といった風だった。
「浴衣です!」
「あぁ、だって本当にたまたま梶さんに会っちゃったんだって。それで名桜が浴衣着るって聞いて、いいなぁって言ったらじゃあ着ちゃえばって。」
「梶さん…何考えてるんですか…。」
「でも楽しかったよ。思い出も増えたし。あとで名桜にも送るね。」
「…それは、ありがたいですけど。自分で撮りたい気持ちもなくはなかったですけどね。」
「はは。じゃあ今度、浴衣で撮影しようか。オフの日になっちゃうけど。」
「自分が超売れっ子であるという自覚、お願いだからもってください。」
「不思議なくらいそんな気がしないんだよなぁ…。」
まだ明るい空を見上げてそんなことを言う知春は、もう私服に戻っている。歩幅が小さくなる名桜に合わせて歩いてくれているのだろう。ほとんど隣を歩くことができている。
待ち合わせ場所は駅だった。駅前にはまだ誰もいなかった。
「…早かったですね。」
「スタジオからの距離を考えて、結構早めに動いたしね。」
「とりあえず、知春さん。」
「なに?」
「目立つの絶対禁止ですからね。守り切れませんよ?」
「大丈夫大丈夫。」
目さえ見てしまえば『伊月知春』だとわかる。それなのに、こんなに余裕な態度はどうしてなのだろう。そんなことを思いながら、名桜は小さな柵に腰掛けた。
「…どういうことですか?」
「え、怒ってる?」
「なんで言ってくれなかったんですか?」
「何のこと?」
「今日のことですよ!」
「え?」
知春はまったくピンときていない、といった風だった。
「浴衣です!」
「あぁ、だって本当にたまたま梶さんに会っちゃったんだって。それで名桜が浴衣着るって聞いて、いいなぁって言ったらじゃあ着ちゃえばって。」
「梶さん…何考えてるんですか…。」
「でも楽しかったよ。思い出も増えたし。あとで名桜にも送るね。」
「…それは、ありがたいですけど。自分で撮りたい気持ちもなくはなかったですけどね。」
「はは。じゃあ今度、浴衣で撮影しようか。オフの日になっちゃうけど。」
「自分が超売れっ子であるという自覚、お願いだからもってください。」
「不思議なくらいそんな気がしないんだよなぁ…。」
まだ明るい空を見上げてそんなことを言う知春は、もう私服に戻っている。歩幅が小さくなる名桜に合わせて歩いてくれているのだろう。ほとんど隣を歩くことができている。
待ち合わせ場所は駅だった。駅前にはまだ誰もいなかった。
「…早かったですね。」
「スタジオからの距離を考えて、結構早めに動いたしね。」
「とりあえず、知春さん。」
「なに?」
「目立つの絶対禁止ですからね。守り切れませんよ?」
「大丈夫大丈夫。」
目さえ見てしまえば『伊月知春』だとわかる。それなのに、こんなに余裕な態度はどうしてなのだろう。そんなことを思いながら、名桜は小さな柵に腰掛けた。



