シャワーを浴び終えると、グレーのスウェットの上下とバスタオルが置かれていた。絶対にぶかぶかだが、それはもう仕方がない。下着だけだったこともあって乾燥は早かったようだ。まだ少し暖かい下着を着て、スウェットを頭から被った。案の定手も足も知春の方が長かったため、名桜は袖をまくった。
風呂場から出て、玄関の方を見ると名桜が通ったところがびちょびちょだった。それもそのはずである。そしてふと思い出す。濡れた衣服のことを。
リビングに向かうと、知春が真剣な表情で台本に目を通していた。
「お風呂、ありがとうございました。」
目を見られたくなくて、目を逸らしてしまう。しかし、知春はいつもと変わらぬ声のトーンで話しかけてくれる。
「ちゃんとあったまった?」
「はい。…あ、えっと、洗濯機借りていいですか?脱水も使いたくて。」
「いいよ。あと、髪も乾かす?」
「ドライヤーも貸してください。」
「うん。こっち。」
「あ、それと床拭いてもいいタオルも借りたいです。」
「え?」
「廊下、濡らしちゃったんで。」
「あー…そっか。じゃあ俺そっちやるから、名桜は脱水と髪やってていいよ。」
「だめですよ、私のせいなんですから。」
「いいって。その方が効率がいいじゃん。ね?」
目が合ってしまった。目の前にいるのは芸能人じゃなくなったいつも通りの『伊月知春』だった。ふにゃっとした笑顔を向けられるとそれ以上抵抗できなくなって、名桜は知春に従った。
風呂場から出て、玄関の方を見ると名桜が通ったところがびちょびちょだった。それもそのはずである。そしてふと思い出す。濡れた衣服のことを。
リビングに向かうと、知春が真剣な表情で台本に目を通していた。
「お風呂、ありがとうございました。」
目を見られたくなくて、目を逸らしてしまう。しかし、知春はいつもと変わらぬ声のトーンで話しかけてくれる。
「ちゃんとあったまった?」
「はい。…あ、えっと、洗濯機借りていいですか?脱水も使いたくて。」
「いいよ。あと、髪も乾かす?」
「ドライヤーも貸してください。」
「うん。こっち。」
「あ、それと床拭いてもいいタオルも借りたいです。」
「え?」
「廊下、濡らしちゃったんで。」
「あー…そっか。じゃあ俺そっちやるから、名桜は脱水と髪やってていいよ。」
「だめですよ、私のせいなんですから。」
「いいって。その方が効率がいいじゃん。ね?」
目が合ってしまった。目の前にいるのは芸能人じゃなくなったいつも通りの『伊月知春』だった。ふにゃっとした笑顔を向けられるとそれ以上抵抗できなくなって、名桜は知春に従った。



