リナリア

* * *

「今日の撮影担当の麻倉です。よろしくお願いします。」
「あー麻倉さん、よろしくお願いします。知春と仲がいいって噂の。」

 猫っ毛の茶髪が揺れた。人懐っこい笑顔がずいっと名桜の目の前に現れる。 

「仲がいいかは…ちょっとわからないですけど。上原さん、知春さんと共演されてますもんね今。」
「割と一緒になること多くて、仲良くしてるんだ、知春とは。だから今日の撮影楽しみだったんだよね。よろしくね。」

(…なんていうか、知春さんとは違って気さくなタイプの人だ…。)

 知春はある意味、仕事の時は一線引いている。ここは仕事の領域で、ここはプライベート、という線がある。しかし、上原は違う。知春同様若手で売れているからこそ名桜でも知っているが、そういう線はあまり感じない。

「というか、なんかすごいね、しっかりしててって言えばあれだけど。今麻倉さんっていくつ?」
「えっと、高校2年です。」
「うわ、3コも下なんだ。若いのにしっかりしてる!」
「あ、ありがとうございます。撮影、頑張ります。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」

 差し出された手を、名桜はおずおずと握った。名桜の手の力の弱さなんて気にせず、上原はぐっとその手に力を込めて軽く振った。
 今日の撮影はポスターだ。男性用の整髪剤のCM関係の1枚を撮るのが今日の目的である。上原は背も高く筋肉質で、男性からの人気もある俳優であり、納得の人選だ。

「今もう使ってますか?」
「一応?手につけようか?」
「お願いします。いつもスタイリングしてる感じで髪、触ってもらっていいですか?」
「もちろん。」

 手に馴染ませる姿も様になる。さすがに背景がいまいちなのでシャッターは切らないが、上原には自由に動いてもらった方がいい気がする。