* * *
17時よりも少し前に、知春はスタジオに到着した。いつも通りの入り口から入るだけなのに、いつもよりも格段に緊張していて一歩一歩踏みしめる度にドクンと心臓が鳴った。
撮影はもう終わっていたようだった。PCで画像を確認するその後ろ姿にハッとする。知春の知っている名桜の後ろ姿ではない。
「…名、…桜?」
呼びかけられてパッと振り返ったのは間違いなく名桜だった。
「知春さん!あっ、は、早かったですね。すみません、写真の確認をしていまして…。」
「それは全然いいんだけど…髪、切ったんだ。」
「はい。昨日、切ってきました。」
名桜の髪は結わずに下ろすと長かったため、撮影時には下の方で一つにまとめていることが多かった。その名桜の長かった髪は今やショートボブの長さになっていた。ふわりとしたシルエットで、少し大人びて見える。
「…驚いた…。名桜の背中だなってわかるのに、…本物かなって。」
「久しぶりに短くしました。短いとシャンプーが楽でいいですね。」
(なんでこんな、思い切り髪を切ったの?)
思わず浮かんだ疑問。でもそれを今すぐ聞いていいのかはわからない。待っていれば話してくれるのか、それともそれは聞いてはいけない話なのか、今の知春にはわからなかった。ただ、新しい名桜は新鮮で、それでいてとても…ーーー。
「…綺麗だね。」
「え…?」
「出会った時、名桜は俺の顔を見て綺麗な顔って言ったでしょ?…あれに近いと思う。今ならあの時の名桜の気持ちがわかる気がする。…綺麗。」
髪を切ったからだけではないように思う。何か心が決まって、前とは違うものを見ているようにも見える。ただ、知春の言葉に少しずつ顔を赤らめていく名桜は前のように可愛かった。
「ち、知春さん…!?」
「似合ってる。…なんでそんなに切ったか、聞いても平気なこと?」
「それはっ…隠すようなことでもないので話せますけどっ…!」
名桜はパタンとPCを閉じた。そしてまっすぐに知春に向き合う。
「このビルにも屋上があるんです。話は屋上ででもいいですか?」
「うん。」
揺らぎも何も見えなかった。そんな名桜の後ろを知春はゆっくりと追いかけた。
17時よりも少し前に、知春はスタジオに到着した。いつも通りの入り口から入るだけなのに、いつもよりも格段に緊張していて一歩一歩踏みしめる度にドクンと心臓が鳴った。
撮影はもう終わっていたようだった。PCで画像を確認するその後ろ姿にハッとする。知春の知っている名桜の後ろ姿ではない。
「…名、…桜?」
呼びかけられてパッと振り返ったのは間違いなく名桜だった。
「知春さん!あっ、は、早かったですね。すみません、写真の確認をしていまして…。」
「それは全然いいんだけど…髪、切ったんだ。」
「はい。昨日、切ってきました。」
名桜の髪は結わずに下ろすと長かったため、撮影時には下の方で一つにまとめていることが多かった。その名桜の長かった髪は今やショートボブの長さになっていた。ふわりとしたシルエットで、少し大人びて見える。
「…驚いた…。名桜の背中だなってわかるのに、…本物かなって。」
「久しぶりに短くしました。短いとシャンプーが楽でいいですね。」
(なんでこんな、思い切り髪を切ったの?)
思わず浮かんだ疑問。でもそれを今すぐ聞いていいのかはわからない。待っていれば話してくれるのか、それともそれは聞いてはいけない話なのか、今の知春にはわからなかった。ただ、新しい名桜は新鮮で、それでいてとても…ーーー。
「…綺麗だね。」
「え…?」
「出会った時、名桜は俺の顔を見て綺麗な顔って言ったでしょ?…あれに近いと思う。今ならあの時の名桜の気持ちがわかる気がする。…綺麗。」
髪を切ったからだけではないように思う。何か心が決まって、前とは違うものを見ているようにも見える。ただ、知春の言葉に少しずつ顔を赤らめていく名桜は前のように可愛かった。
「ち、知春さん…!?」
「似合ってる。…なんでそんなに切ったか、聞いても平気なこと?」
「それはっ…隠すようなことでもないので話せますけどっ…!」
名桜はパタンとPCを閉じた。そしてまっすぐに知春に向き合う。
「このビルにも屋上があるんです。話は屋上ででもいいですか?」
「うん。」
揺らぎも何も見えなかった。そんな名桜の後ろを知春はゆっくりと追いかけた。



