「…今日、本当は…。」
「うん。」
「知春さんの撮影があったんです。父に任されていたものだったけれど、おそらく私がやりたそうにしていたから父がやるかと聞いてくれて、やると答えていたのに。…顔さえ、今はもう見られない。…少なくとも今日は、合わせる顔がないって思ってしまって…。」
「なんで、合わせる顔がないの?なっちゃん、ちーちゃんに悪いこと、してなくない?」
「え?」
「告白の返事をしなかったことは、悪いことではないんじゃないかな。少なくとも、私はそう思うけど。」
自分がひどい顔をしているというのもそうだが、まっすぐな言葉にまっすぐさを返せなかった自分が知春の前に立つ勇気がなかった。笑って今までのようには話せない。かといって知春に気を遣わせたいわけじゃなかった。
「ちーちゃん、すぐ返事してって?」
名桜は首を横に振った。そんな名桜を見て、彩羽は優しく微笑んだ。
「うん。ちーちゃんがそんなこと言うはずないよね。私ね、今回ばかりはちょっとだけ、ちーちゃんの気持ちがわかる気がする。」
「…知春さんの気持ち…?」
「うん。あのね、なっちゃんに好きだって言ってほしくて気持ちを伝えたかったわけじゃないんだよ、多分。ただね、気付いてほしかった。…あなたを特別に想ってるから、あなたに近付いてしまうんだよって。…もっと近付きたいんだよって、言いたくなった。…映画の撮影で、役にあてられちゃったのかもね。役だけど、ただの役にしてしまうにはちょっと自分に近くて、撮影が終わってはい終わり!とはなれなかったね、私もちーちゃんも。」
「…気付いてほしかった…?」
「うん。だって、なっちゃんは自分をそういう対象に入れてなかったでしょう?ちーちゃんが恋をするとして、その相手が自分だって思ったこと、なかったんじゃない?」
知春にはいつか、きっと素敵な相手が現れる。そんなことをぼんやりと思っていた。それは、当たり前のように自分を対象から除外しているということだったようだ。彩羽の指摘に、名桜は静かに頷いた。
「なっちゃんはそうだよね。でも、ちーちゃんはずっとなっちゃんを見てたよ。本当に優しい目で、なっちゃんを見てた。」
彩羽がにこっと微笑む。
「よし、出来上がり!上出来!可愛いね~!」
鏡に映る自分は、まるで別人のようだった。自信のなさそうな瞳だけは自分のものだとわかる。
「…すごい、です。彩羽さん、メイクがお得意なんですね。」
「勉強したよ。基本はやってもらえるけど、自分でやれることは多い方がいいしね。」
「確かに、自分でやれることは多い方がいい…。私もそう思います。」
「さて、じゃあ出かけよっか。美味しいものを食べて、元気を取り戻そう!」
彩羽が名桜の手を軽く引く。彩羽の優しさがしみて、泣きたくないのにじわっと名桜の目には涙が浮かんだ。
「うん。」
「知春さんの撮影があったんです。父に任されていたものだったけれど、おそらく私がやりたそうにしていたから父がやるかと聞いてくれて、やると答えていたのに。…顔さえ、今はもう見られない。…少なくとも今日は、合わせる顔がないって思ってしまって…。」
「なんで、合わせる顔がないの?なっちゃん、ちーちゃんに悪いこと、してなくない?」
「え?」
「告白の返事をしなかったことは、悪いことではないんじゃないかな。少なくとも、私はそう思うけど。」
自分がひどい顔をしているというのもそうだが、まっすぐな言葉にまっすぐさを返せなかった自分が知春の前に立つ勇気がなかった。笑って今までのようには話せない。かといって知春に気を遣わせたいわけじゃなかった。
「ちーちゃん、すぐ返事してって?」
名桜は首を横に振った。そんな名桜を見て、彩羽は優しく微笑んだ。
「うん。ちーちゃんがそんなこと言うはずないよね。私ね、今回ばかりはちょっとだけ、ちーちゃんの気持ちがわかる気がする。」
「…知春さんの気持ち…?」
「うん。あのね、なっちゃんに好きだって言ってほしくて気持ちを伝えたかったわけじゃないんだよ、多分。ただね、気付いてほしかった。…あなたを特別に想ってるから、あなたに近付いてしまうんだよって。…もっと近付きたいんだよって、言いたくなった。…映画の撮影で、役にあてられちゃったのかもね。役だけど、ただの役にしてしまうにはちょっと自分に近くて、撮影が終わってはい終わり!とはなれなかったね、私もちーちゃんも。」
「…気付いてほしかった…?」
「うん。だって、なっちゃんは自分をそういう対象に入れてなかったでしょう?ちーちゃんが恋をするとして、その相手が自分だって思ったこと、なかったんじゃない?」
知春にはいつか、きっと素敵な相手が現れる。そんなことをぼんやりと思っていた。それは、当たり前のように自分を対象から除外しているということだったようだ。彩羽の指摘に、名桜は静かに頷いた。
「なっちゃんはそうだよね。でも、ちーちゃんはずっとなっちゃんを見てたよ。本当に優しい目で、なっちゃんを見てた。」
彩羽がにこっと微笑む。
「よし、出来上がり!上出来!可愛いね~!」
鏡に映る自分は、まるで別人のようだった。自信のなさそうな瞳だけは自分のものだとわかる。
「…すごい、です。彩羽さん、メイクがお得意なんですね。」
「勉強したよ。基本はやってもらえるけど、自分でやれることは多い方がいいしね。」
「確かに、自分でやれることは多い方がいい…。私もそう思います。」
「さて、じゃあ出かけよっか。美味しいものを食べて、元気を取り戻そう!」
彩羽が名桜の手を軽く引く。彩羽の優しさがしみて、泣きたくないのにじわっと名桜の目には涙が浮かんだ。



