メイクボックスが広げられた個室へと案内され、鏡の前の椅子までくると名桜は肩を押され、ストンと座った。
「あの…本当にいいんでしょうか?」
「うん。ちゃんと使用許可取ってるし、マネージャーもノリノリで『やってあげちゃいなさい』って返事来たよ?」
「…そう、ですか。」
そこまで言われてしまうと名桜に反撃の余地はなかった。鏡越しに見る彩羽はニコニコと笑顔だ。そんな笑顔に今日はいつも以上にほっとしてしまう。
「さて、なっちゃんは元がいいのでそんなに派手めにはせずに可愛く仕上げようね。」
「よろしく…お願いします。」
モデルや俳優がメイクをされている姿を横目にちらっと見ることは日々ある。しかし、自分がこうやって鏡の前に座って何かをされるというのは、もしかすると夏祭りの浴衣の着付けをしてもらった時以来かもしれない。
「それで、いきなり本題、聞いちゃっていい?」
「へっ?」
「告白、何て返したの?」
「あっ…えっと…。」
普通そうなのだ、きっと。告白というものはされたらすぐに返すもので、きっと自分のような失礼な真似はしない。そう思うと、思わず手に力が入った。口をきゅっと結んで、名桜は俯く。
「なっちゃん?」
「…返事は…その、できていなくて…。」
「そっかそっか。そりゃそうだよね。びっくりしただろうし、なっちゃんは。」
「…彩羽さんは…。」
「うん。」
彩羽の優しい手が名桜の顔をゆっくりと上向かせる。鏡に映る自分が今にも泣きそうな顔をしていて、それを見ても余計に苦しい。中身が何かはわからないがクリームのようなものを手に取った彩羽は、温かな手をそのまま名桜の頬に触れさせた。頬をすっと伸びていく優しい香りのする何かはきっとメイクのスタートに必要なものなのだろう。
「…彩羽さんは知春さんと『同士』だと仰っていました。それがどういう意味か、聞いてもいいですか?」
「もちろん。そうだね、そこを話した方がなっちゃんは色々納得できるかも。本当に言葉通りで、私とちーちゃんは『今のところ叶ってないけど大事な人がいる者同士』として、『両想い』を映画の中で作ったの。」
鏡越しの彩羽はにっこりと微笑む。
「私は前に話した、あの頃の私を救ってくれた『彼』をちーちゃんに重ねて、ちーちゃんは私に『なっちゃん』を重ねて、大事な人に触れる瞬間を演じた。…確認したわけじゃないけど、自分にも覚えがあるっていうか、そうでもしないとねできないよ。そういう目も、そういう触れ方も。伊月知春のファンには悪いけど、こうやって抱きしめてくれるのが『彼』だったらきっとこういう風に泣く、とかさ、そんなことを頭の中では考えてた。こんなこと言ったら怒られちゃうね。袋叩きにあっちゃうかも。」
彩羽は笑いながら、そう言った。彩羽の手は次の工程に進んでいるようだ。されるがままになりながら、名桜は彩羽の言葉を嚙みしめた。
「あの…本当にいいんでしょうか?」
「うん。ちゃんと使用許可取ってるし、マネージャーもノリノリで『やってあげちゃいなさい』って返事来たよ?」
「…そう、ですか。」
そこまで言われてしまうと名桜に反撃の余地はなかった。鏡越しに見る彩羽はニコニコと笑顔だ。そんな笑顔に今日はいつも以上にほっとしてしまう。
「さて、なっちゃんは元がいいのでそんなに派手めにはせずに可愛く仕上げようね。」
「よろしく…お願いします。」
モデルや俳優がメイクをされている姿を横目にちらっと見ることは日々ある。しかし、自分がこうやって鏡の前に座って何かをされるというのは、もしかすると夏祭りの浴衣の着付けをしてもらった時以来かもしれない。
「それで、いきなり本題、聞いちゃっていい?」
「へっ?」
「告白、何て返したの?」
「あっ…えっと…。」
普通そうなのだ、きっと。告白というものはされたらすぐに返すもので、きっと自分のような失礼な真似はしない。そう思うと、思わず手に力が入った。口をきゅっと結んで、名桜は俯く。
「なっちゃん?」
「…返事は…その、できていなくて…。」
「そっかそっか。そりゃそうだよね。びっくりしただろうし、なっちゃんは。」
「…彩羽さんは…。」
「うん。」
彩羽の優しい手が名桜の顔をゆっくりと上向かせる。鏡に映る自分が今にも泣きそうな顔をしていて、それを見ても余計に苦しい。中身が何かはわからないがクリームのようなものを手に取った彩羽は、温かな手をそのまま名桜の頬に触れさせた。頬をすっと伸びていく優しい香りのする何かはきっとメイクのスタートに必要なものなのだろう。
「…彩羽さんは知春さんと『同士』だと仰っていました。それがどういう意味か、聞いてもいいですか?」
「もちろん。そうだね、そこを話した方がなっちゃんは色々納得できるかも。本当に言葉通りで、私とちーちゃんは『今のところ叶ってないけど大事な人がいる者同士』として、『両想い』を映画の中で作ったの。」
鏡越しの彩羽はにっこりと微笑む。
「私は前に話した、あの頃の私を救ってくれた『彼』をちーちゃんに重ねて、ちーちゃんは私に『なっちゃん』を重ねて、大事な人に触れる瞬間を演じた。…確認したわけじゃないけど、自分にも覚えがあるっていうか、そうでもしないとねできないよ。そういう目も、そういう触れ方も。伊月知春のファンには悪いけど、こうやって抱きしめてくれるのが『彼』だったらきっとこういう風に泣く、とかさ、そんなことを頭の中では考えてた。こんなこと言ったら怒られちゃうね。袋叩きにあっちゃうかも。」
彩羽は笑いながら、そう言った。彩羽の手は次の工程に進んでいるようだ。されるがままになりながら、名桜は彩羽の言葉を嚙みしめた。



