リナリア

「…そう、です。」
『じゃあ、ちーちゃんのことだね、なっちゃんがそうなっちゃうのは。』
「えっ…」
『さしずめ、告白でもされたかなー?』
「な、なんでっ…」
『ん-…勘もあるけど、ちーちゃんと私はね、「同士」だからね。そっかそっか。なるほどね。なっちゃん的にはびっくりしたね。よしよし、私、超いいタイミングで声掛けた!偉いぞ私!ここは私に任せて!じゃあなっちゃん、到着できそうな時間がわかったら教えて?それに合わせて私も事務所に行くから。』
「は、はいっ…。」

 勢いに押されて返事をしてしまったが、彩羽が淡々と言い当てたことにまだ心臓がドクドクと鳴っている。

(…彩羽さんが鋭いのか…それとも、私か知春さんが…わかりやすかった…?)

 ひとまず、彩羽を待たせてはいけないと思い、重い体と思考を引きずって着替える。3月はまだまだ冷える。特に今日は風が冷たいらしい。厚手のタイツを履いて、ロングスカートに手を伸ばした。コートを羽織って、知春から貰ったマフラーに触れるとまた胸がずきっとわかりやすく音を立てた気がした。それを隠すために名桜はさっとマフラーを首にかけ、そのまま家を後にした。

 電車の乗り換えがスムーズにいき、1時間もせずに彩羽の事務所に到着した。近くのコンビニにいると言われたので、コンビニを覗くとラフな格好をした彩羽がいた。

「あー可愛いね、なっちゃん。私服、そういう感じなんだ?」
「…はい。今日は彩羽さんにお会いするので、見栄えが悪いのは…と思いまして。」
「可愛い!うん、なんかイメージ通り!よし、じゃあ早速お出かけメイク、やっちゃおう。」
「すみません。よろしくお願いします。」

 名桜が頭を下げると、彩羽はカラッと笑って名桜の背を押した。

「こういう女の子っぽいこと、やってみたかったんだ。叶えてくれてありがとね。ばっちり可愛くして、ちーちゃんに写真送っちゃお。」
「えっ!?」
「えーだって今からめちゃくちゃ可愛くしてあげるんだよ?こんなの独り占めしたら私が怒られちゃうよ!上原さんにも送っておく?」
「い、いいです!送らないでください!」
「ちぇー!ま、いいや。お腹空いたし、てきぱきやろ!」

 彩羽にぐいぐいと背中を押されるがままに、名桜は事務所に入った。