「『明日、普通ではいられないからあと1日、もらってもいい?』って言ったんだよね。」
「…あと1日。」
「面白いよね。そんなことを言われたらつっこんでしまいたくなるに決まってるのに、それが何故なのかは言わずにそのまま引っ込んじゃったんだ。…まぁ、今までそんなことはなかったから、僕も何て声を掛けていいかわからなくてそのままにしてしまったんだけどね。」
知春は俯いた。考え込ませている。仕事ができないくらいに。悩ませている。そうしたかったわけではないのに。
「だから、伊月くんと何かあったんだなと思い当たったんだけど、それも僕が聞いていいことかな、お節介かなっていう気持ちもある。だから無理に全て話してほしいとかいうわけじゃないから、そこは気負わないでね。」
「…はい。…あの、相談できる人がいないので、話してもいいですか?」
「もちろんだよ。」
いつもならば、麻倉の笑顔に名桜が重なって見えることはない。しかし今日は、間の取り方や微笑み方に名桜が重なって見える。
麻倉の優しさに甘えて話すことにしたが、本来は話すべきではないのかもしれない。そう思う心もあった。しかし、他の人の意見も聞きたかった。それこそ、芸能人と一般人の恋を実らせた麻倉の意見を。
「…名桜に告白しました。」
「なるほど。そうか、だからあの子はああいう反応になったんだね。」
「…結果として、自分だけがすっきりして、名桜のことは困らせてしまったんですけど…。」
「伊月くんがすっきりしたということは、名桜は返事をしたの?」
麻倉はまっすぐに問いかけた。
「いいえ。返事は求めませんでした。」
「そっか。だから今は名桜が考える番になったってことだね。」
「僕が伝えなければ…困らせていなかったと思います。」
「でも、伝える前に伊月くんはたくさん考えたでしょう?伝えるかどうかも含めて。だから次は名桜の番になっていいんだよ。」
あまりにも柔らかくその声が降ってきた。ぐっと握っていた自分の拳ばかりを見つめていた知春はその声に導かれるように顔を上げて、麻倉を見た。
「そういうものですか?」
「そう。…って、昔僕は、由紀さんに言われたんだ。あ、由紀さんっていうのは僕の妻で名桜の母なんだけどね。」
「はい、存じています。映画の現場で、葉月さんから名桜が色々聞いていたみたいで一緒に聞きました。」
「葉月さんは由紀さんをとても可愛がっていたし、由紀さんも葉月さんが好きでよく盛り上がっていたよ。そうか、葉月さんが色々話してるなら、…うん。僕ももう少し名桜に由紀さんのことを話してもいいのかもしれないね。」
麻倉の表情が少しだけ、柔らかいものから切なさを帯びたものに変わった。
「…あと1日。」
「面白いよね。そんなことを言われたらつっこんでしまいたくなるに決まってるのに、それが何故なのかは言わずにそのまま引っ込んじゃったんだ。…まぁ、今までそんなことはなかったから、僕も何て声を掛けていいかわからなくてそのままにしてしまったんだけどね。」
知春は俯いた。考え込ませている。仕事ができないくらいに。悩ませている。そうしたかったわけではないのに。
「だから、伊月くんと何かあったんだなと思い当たったんだけど、それも僕が聞いていいことかな、お節介かなっていう気持ちもある。だから無理に全て話してほしいとかいうわけじゃないから、そこは気負わないでね。」
「…はい。…あの、相談できる人がいないので、話してもいいですか?」
「もちろんだよ。」
いつもならば、麻倉の笑顔に名桜が重なって見えることはない。しかし今日は、間の取り方や微笑み方に名桜が重なって見える。
麻倉の優しさに甘えて話すことにしたが、本来は話すべきではないのかもしれない。そう思う心もあった。しかし、他の人の意見も聞きたかった。それこそ、芸能人と一般人の恋を実らせた麻倉の意見を。
「…名桜に告白しました。」
「なるほど。そうか、だからあの子はああいう反応になったんだね。」
「…結果として、自分だけがすっきりして、名桜のことは困らせてしまったんですけど…。」
「伊月くんがすっきりしたということは、名桜は返事をしたの?」
麻倉はまっすぐに問いかけた。
「いいえ。返事は求めませんでした。」
「そっか。だから今は名桜が考える番になったってことだね。」
「僕が伝えなければ…困らせていなかったと思います。」
「でも、伝える前に伊月くんはたくさん考えたでしょう?伝えるかどうかも含めて。だから次は名桜の番になっていいんだよ。」
あまりにも柔らかくその声が降ってきた。ぐっと握っていた自分の拳ばかりを見つめていた知春はその声に導かれるように顔を上げて、麻倉を見た。
「そういうものですか?」
「そう。…って、昔僕は、由紀さんに言われたんだ。あ、由紀さんっていうのは僕の妻で名桜の母なんだけどね。」
「はい、存じています。映画の現場で、葉月さんから名桜が色々聞いていたみたいで一緒に聞きました。」
「葉月さんは由紀さんをとても可愛がっていたし、由紀さんも葉月さんが好きでよく盛り上がっていたよ。そうか、葉月さんが色々話してるなら、…うん。僕ももう少し名桜に由紀さんのことを話してもいいのかもしれないね。」
麻倉の表情が少しだけ、柔らかいものから切なさを帯びたものに変わった。



