「え…?」
(…早速困らせてる。笑顔が消えちゃった。)
「…ごめんね。でも、嘘じゃない。名桜のことが好きだよ。…好き。深冬への気持ちとは…少し違うんだけど、こうなると深冬への気持ちは恋では、なかったのかもなんて思う。…名桜を想う気持ちはもっとあったかくて、優しい。名桜のことを考えている時間は、…悩むんだけど、でもそれも含めて優しい気持ちになれる。そういう『好き』って気持ちが、…もっと前からあった。『両想いの練習』に付き合ってほしいってお願いした時には自覚してなかった気持ちが、…少しずつわかっていった。…映画の撮影で、はっきり気付いた。彩羽さんの上に名桜が重ならないと出てこない、表情も気持ちも。…追いつかない。」
名桜の目は、もう合わなくなってしまっていた。耳が赤く、呼吸はギリギリできているようだった。視線は地面とまでは言わないが、ほぼ下の方を見つめている。決まったどこかに焦点が定まっているようには見えなかった。
手を振り払われてはいないため、知春は握っていた指先にきゅっと力を込めた。はっとして顔を上げた名桜と目が合う。今にも泣きそうなくらいにうるうるとした瞳と照れた頬が目に入った。
「…ごめん、本当に。勝手なこと言ってるって、わかってる。泣かせたかったわけでもないんだ。」
「ご、ごめんなさい私っ…あの、混乱しててっ…。」
こんな風に戸惑った声で話す名桜のことは初めて見る。上ずった声で、泣かないようにその瀬戸際で耐えている、少なくとも知春にはそう見えた。
「…驚かせるようなことを突然言ってるんだもん、仕方ないよ。嫌かもしれないけど、あと少しだけ、聞いてもらってもいい?」
「…はい。」
「ありがとう。」
「…ごめんなさい…その、顔が…上げられなくて…今すごく…ぐるぐるしていて…。」
「ぐるぐる?」
「…だって、知春さんがそんなことを言うなんて…知春さんは…たくさんの人に愛される人で、これからますますそうなっていく人…だから…。」
「名桜。」
「は、はい。」
返事はするものの目はやはり合わない。それでも知春は言葉を続けた。
「たくさんの人に知られるようになっても、好かれるようになっても、…俺が好きになってほしいのは名桜だけだよ。それをね、伝えないでいることができなくなったから言ったんだ。…この気持ちに、気付いてほしくなった。でも、返事は急がないし、なんならくれなくてもいい。…好きでは、いるよ。…それだけ、知ってはおいて。あ、だけどできれば、俺のことが嫌いになって、関わりたくないって思わない限りは…その、気まずくても…絶縁…拒絶…みたいにはしないでくれると嬉しい。」
我ながら情けない言葉だと思う。それでも口にせずにはいられなかった。関係が切れてしまうことは、やはり怖いから。
(…早速困らせてる。笑顔が消えちゃった。)
「…ごめんね。でも、嘘じゃない。名桜のことが好きだよ。…好き。深冬への気持ちとは…少し違うんだけど、こうなると深冬への気持ちは恋では、なかったのかもなんて思う。…名桜を想う気持ちはもっとあったかくて、優しい。名桜のことを考えている時間は、…悩むんだけど、でもそれも含めて優しい気持ちになれる。そういう『好き』って気持ちが、…もっと前からあった。『両想いの練習』に付き合ってほしいってお願いした時には自覚してなかった気持ちが、…少しずつわかっていった。…映画の撮影で、はっきり気付いた。彩羽さんの上に名桜が重ならないと出てこない、表情も気持ちも。…追いつかない。」
名桜の目は、もう合わなくなってしまっていた。耳が赤く、呼吸はギリギリできているようだった。視線は地面とまでは言わないが、ほぼ下の方を見つめている。決まったどこかに焦点が定まっているようには見えなかった。
手を振り払われてはいないため、知春は握っていた指先にきゅっと力を込めた。はっとして顔を上げた名桜と目が合う。今にも泣きそうなくらいにうるうるとした瞳と照れた頬が目に入った。
「…ごめん、本当に。勝手なこと言ってるって、わかってる。泣かせたかったわけでもないんだ。」
「ご、ごめんなさい私っ…あの、混乱しててっ…。」
こんな風に戸惑った声で話す名桜のことは初めて見る。上ずった声で、泣かないようにその瀬戸際で耐えている、少なくとも知春にはそう見えた。
「…驚かせるようなことを突然言ってるんだもん、仕方ないよ。嫌かもしれないけど、あと少しだけ、聞いてもらってもいい?」
「…はい。」
「ありがとう。」
「…ごめんなさい…その、顔が…上げられなくて…今すごく…ぐるぐるしていて…。」
「ぐるぐる?」
「…だって、知春さんがそんなことを言うなんて…知春さんは…たくさんの人に愛される人で、これからますますそうなっていく人…だから…。」
「名桜。」
「は、はい。」
返事はするものの目はやはり合わない。それでも知春は言葉を続けた。
「たくさんの人に知られるようになっても、好かれるようになっても、…俺が好きになってほしいのは名桜だけだよ。それをね、伝えないでいることができなくなったから言ったんだ。…この気持ちに、気付いてほしくなった。でも、返事は急がないし、なんならくれなくてもいい。…好きでは、いるよ。…それだけ、知ってはおいて。あ、だけどできれば、俺のことが嫌いになって、関わりたくないって思わない限りは…その、気まずくても…絶縁…拒絶…みたいにはしないでくれると嬉しい。」
我ながら情けない言葉だと思う。それでも口にせずにはいられなかった。関係が切れてしまうことは、やはり怖いから。



