リナリア

「…あ、あのっ、そうでした、渡すものがあって…!」
「渡すもの?」

 名桜がカバンの中から、薄ピンク色の袋を取り出した。どうやら丁寧にラッピングされたもののようだ。

「卒業のお祝いに…あの、何を送ったらと悩んだのですが…でも、力作です。」
「開けてもいいの?」
「はい。」

 袋を開けると、中には表紙がパステルイエローの小さなアルバムがあった。

「…アルバム…手作り?」
「仕事で使った写真は一切使用してません!あくまで、私が個人的に撮ったものの中から…その、…知春さんが、高校生だったときのものを選んでいます。」

 知春は1ページ目をめくった。文化祭で飾られていた1枚がL版の大きさでそのまま貼られている。その下には名桜の字で小さなコメントもある。

『知春さんの顔が綺麗すぎて、この時の私はリナリアが負けてしまうと思って入れていません。』

 次のページは、少し気の抜けた表情でリナリアを見つめる知春の写真。

『スタジオでの撮影よりも表情が柔らかくて、その中でも特に気に入っているものを選びました。』

 ページをめくると名桜の口元が牛丼のタレで汚れたまま、スタジオのテーブルに伏せて寝ている写真が現れて、知春はふふっと笑った。

『…これを入れるか迷いましたが、知春さんが撮影した記念ということで入れました。あまり見ないでください。』

 次に現れたのは知春の姉である深冬の結婚式での知春と名桜だった。知春はどちらかといえば撮影用の笑みを浮かべていて、名桜はといえば少し緊張した顔をしている。

『式場の方に1枚だけ撮っていただいたのが手元に残っていました。一応入れます。』

 夏に向日葵畑で撮った写真が出てきた。知春が唯一データでもらった1枚も入っている。知春が撮影した中でのお気に入りで、今見返しても知春の口元は微かに緩む。

『知春さん用のアルバムを作成しているところに父が現れ、話してくれました。この写真を父に送ったようですね。知春さんの撮影センスがいいと褒めていました。』

 向日葵畑ではお互いにカメラを持って撮影をしたため、それなりに双方が写っている写真の枚数があったようだ。

『これは父チョイスです。これもよく撮れてるね、と言っています。自然な表情を引き出すセンスがあるとのことです。』
『私は向日葵と向かい合って目線を合わせているこの1枚が好きです。無邪気な感じが、普段と違っていてぐっときます。』