* * *
知春と名桜がいなくなった屋上の温度は急激に冷えたように、少なくとも椋花には感じられた。拓実の方を見ると、なんだかいつも通りの様子でそれが妙に椋花の気持ちを焦らせる。
「…知春に言うとは思わなかった。いつ言ってたの?」
「今日。」
「今日!?」
「うん。知春、朝早く来たから。ちょい話そうって言ってそこで。」
「…拓実はずっと、正直でいいね。」
「そうかぁ?俺、結構長いこと、椋花への気持ちとか言わないできたし、全然正直者じゃなくね?」
「…それは、私が困ると思ったからでしょ。」
「まぁそれもゼロじゃないけど、単純にびびってたからだって。どう考えても見込みなしなら、言ったって壊すだけじゃん。それが嫌で、でも近くにいたくて友達でいた。…でー、余計なお世話で椋花と知春くっつけようとして椋花に怒られたから告白した。」
「…なんか、語弊がない?」
「まぁでもざっくりとこんな感じじゃん。…それで。」
屋上の手すりに両腕を乗せたまま、顔だけは椋花の方を向いて、拓実は口を開いた。
「椋花は何を話してくれんの、俺に。」
そのまっすぐな目と、いつもとは違う声に心臓がわかりやすく、きつく一度音を立てた。自分の手の温度がなくなったのがわかって、椋花の視線は泳いだ。
「…えっと、その。…散々待たせたのに、全然、まとまらなくて…でも、一つだけ、ずるいってことをわかった上で言っていいなら…。」
「うん。何?」
拓実の目が柔らかくなって、口元が緩んだ。拓実が一気に大人になってしまった気がして、また焦る。遠のくような気がして、気が付くと椋花は拓実の制服の手首の裾あたりを掴んでしまっていた。
「…ごめんっ!」
「なに、別にいいよ。掴んだままでも全然。」
「…ぐちゃぐちゃなままで、まとまってなくて…ごめん。待たせたのに、自分のことなのに、全然わかんない。…でも拓実が他の子と付き合うってなったら、…それはちょっと、…嫌なの。中途半端でごめん。たくさん告白されてるって知ってる。…だから、目移りしても当然だって思ってるしわかってるんだけど、…今言えるの、このくらいしかなくて。」
「はぁー…いやそれさ、実質…いや、いっか。うん。まぁ他の奴と付き合うの、ないからそこは安心して。俺が付き合うのは椋花なんで。とりあえずさ、春休み中にデートだけはしてよ。それでもっと、思い知って。…ていうか、自覚して。」
拓実が椋花の手を握った。その大きさと温かさにまた急激に胸が痛む。さっきから見たことのない表情と声に翻弄されてばかりで苦しい。苦しいのに、嫌じゃない。
「帰ろ。まだ、手は離さないんで。」
知春と名桜がいなくなった屋上の温度は急激に冷えたように、少なくとも椋花には感じられた。拓実の方を見ると、なんだかいつも通りの様子でそれが妙に椋花の気持ちを焦らせる。
「…知春に言うとは思わなかった。いつ言ってたの?」
「今日。」
「今日!?」
「うん。知春、朝早く来たから。ちょい話そうって言ってそこで。」
「…拓実はずっと、正直でいいね。」
「そうかぁ?俺、結構長いこと、椋花への気持ちとか言わないできたし、全然正直者じゃなくね?」
「…それは、私が困ると思ったからでしょ。」
「まぁそれもゼロじゃないけど、単純にびびってたからだって。どう考えても見込みなしなら、言ったって壊すだけじゃん。それが嫌で、でも近くにいたくて友達でいた。…でー、余計なお世話で椋花と知春くっつけようとして椋花に怒られたから告白した。」
「…なんか、語弊がない?」
「まぁでもざっくりとこんな感じじゃん。…それで。」
屋上の手すりに両腕を乗せたまま、顔だけは椋花の方を向いて、拓実は口を開いた。
「椋花は何を話してくれんの、俺に。」
そのまっすぐな目と、いつもとは違う声に心臓がわかりやすく、きつく一度音を立てた。自分の手の温度がなくなったのがわかって、椋花の視線は泳いだ。
「…えっと、その。…散々待たせたのに、全然、まとまらなくて…でも、一つだけ、ずるいってことをわかった上で言っていいなら…。」
「うん。何?」
拓実の目が柔らかくなって、口元が緩んだ。拓実が一気に大人になってしまった気がして、また焦る。遠のくような気がして、気が付くと椋花は拓実の制服の手首の裾あたりを掴んでしまっていた。
「…ごめんっ!」
「なに、別にいいよ。掴んだままでも全然。」
「…ぐちゃぐちゃなままで、まとまってなくて…ごめん。待たせたのに、自分のことなのに、全然わかんない。…でも拓実が他の子と付き合うってなったら、…それはちょっと、…嫌なの。中途半端でごめん。たくさん告白されてるって知ってる。…だから、目移りしても当然だって思ってるしわかってるんだけど、…今言えるの、このくらいしかなくて。」
「はぁー…いやそれさ、実質…いや、いっか。うん。まぁ他の奴と付き合うの、ないからそこは安心して。俺が付き合うのは椋花なんで。とりあえずさ、春休み中にデートだけはしてよ。それでもっと、思い知って。…ていうか、自覚して。」
拓実が椋花の手を握った。その大きさと温かさにまた急激に胸が痛む。さっきから見たことのない表情と声に翻弄されてばかりで苦しい。苦しいのに、嫌じゃない。
「帰ろ。まだ、手は離さないんで。」



