「知春さんは教室でのお話とかが終わったら屋上に向かうんですか?」
「そうなるね。たくとか椋花とかとだけは写真撮りたいから、一緒に1回来てもらおうかな。それが終わったら屋上で、みんなを眺めてる。」
「じゃあ3人の姿を、私に撮らせてください。」
「いいの?」
「はい。なるべく早めに、屋上に向かいますね。事情を話せば多分、他の部員も行かせてくれると思いますので。」
「ごめんね、無理言って。」
「いいえ。知春さんが下に降りてきて、場を混乱させるわけにはいかないですし。でも私としては、3人での思い出もちゃんと残してほしいなと思うので。」
「…うん。ありがとう。」
今日の電話はいつにも増して静かだった。知春が言葉を探しているように感じられて、その間を邪魔したくなくて、自然と名桜も口数が減る。
「あの、さ…。」
「はい。」
「…ん-…いいや、ごめん。卒業式の日に、会えるの楽しみにしてる。多分そこまで、仕事でもスタジオ行くことないっぽいから。」
「そうなんですね。仕事は少し落ち着いていますか?」
「映画の宣伝はあるけど、それ以外は少し落ち着いているかな。名桜は?」
「私も、そうですね。テストとか色々あったので父が頑張ってます、ずっと。」
「そっか。ちょっと前に撮影あったけど、麻倉さんに撮ってもらったな。」
「言ってました。父が感心してましたよ。忙しいのに大学との両立を考えていて、本当にしっかりした子だよねって。」
「麻倉さんにそう言ってもらえると嬉しいな。ちゃんと中身も伴わせないといけないね。…うん、頑張る。」
「…私も、まだまだ頑張ります。」
前はどうやって電話を切っていたのか、上手く思い出せない。静かな間は落ちるのにまだ言葉が続くような気がして、急かすこともできないからそれはまた無音の間になる。
「…ごめんね、いきなり電話なんかしちゃって。でも卒業式、会う約束ができて良かった。」
「知春さんよりも私の方が忙しくありませんし、言ってくだされば時間は作れますよ。」
「そんなことないよ。…名桜の時間だって等しく貴重でしょ。って、このまま長々喋っちゃいそうだな。卒業式、体調崩して会えないってことになったら嫌だから、くれぐれも無理しないでいてね。」
「それは知春さんもですからね。」
「うん。…じゃあ、おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。」
声が聞こえなくなって、名桜は静かに通話を切った。
「そうなるね。たくとか椋花とかとだけは写真撮りたいから、一緒に1回来てもらおうかな。それが終わったら屋上で、みんなを眺めてる。」
「じゃあ3人の姿を、私に撮らせてください。」
「いいの?」
「はい。なるべく早めに、屋上に向かいますね。事情を話せば多分、他の部員も行かせてくれると思いますので。」
「ごめんね、無理言って。」
「いいえ。知春さんが下に降りてきて、場を混乱させるわけにはいかないですし。でも私としては、3人での思い出もちゃんと残してほしいなと思うので。」
「…うん。ありがとう。」
今日の電話はいつにも増して静かだった。知春が言葉を探しているように感じられて、その間を邪魔したくなくて、自然と名桜も口数が減る。
「あの、さ…。」
「はい。」
「…ん-…いいや、ごめん。卒業式の日に、会えるの楽しみにしてる。多分そこまで、仕事でもスタジオ行くことないっぽいから。」
「そうなんですね。仕事は少し落ち着いていますか?」
「映画の宣伝はあるけど、それ以外は少し落ち着いているかな。名桜は?」
「私も、そうですね。テストとか色々あったので父が頑張ってます、ずっと。」
「そっか。ちょっと前に撮影あったけど、麻倉さんに撮ってもらったな。」
「言ってました。父が感心してましたよ。忙しいのに大学との両立を考えていて、本当にしっかりした子だよねって。」
「麻倉さんにそう言ってもらえると嬉しいな。ちゃんと中身も伴わせないといけないね。…うん、頑張る。」
「…私も、まだまだ頑張ります。」
前はどうやって電話を切っていたのか、上手く思い出せない。静かな間は落ちるのにまだ言葉が続くような気がして、急かすこともできないからそれはまた無音の間になる。
「…ごめんね、いきなり電話なんかしちゃって。でも卒業式、会う約束ができて良かった。」
「知春さんよりも私の方が忙しくありませんし、言ってくだされば時間は作れますよ。」
「そんなことないよ。…名桜の時間だって等しく貴重でしょ。って、このまま長々喋っちゃいそうだな。卒業式、体調崩して会えないってことになったら嫌だから、くれぐれも無理しないでいてね。」
「それは知春さんもですからね。」
「うん。…じゃあ、おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。」
声が聞こえなくなって、名桜は静かに通話を切った。



