「ここは見てほしい、気に入ってるというシーンはありますか?」
「気合を入れたシーンはいっぱいあるんですけど…。」
ぐっと拳を握った彩羽に、会場が笑いに包まれる。
「彩羽さん…役柄的に気合とか言うような子じゃなかったじゃないですか…。」
「そこはね、キャラクターと私は別物というかね、ちょっと杏はいい子すぎるっていうか、本当に健気な子だったので…。あ!ここは見てほしいってところ、ありました!杏が一人で泣くところですかね。気に入ってます、あのシーン。」
「結構切ないところじゃないですか、それ。ねぇ?」
司会者がお客さんに話を振る。観客は皆、コクコクと頷いている。中には意外そうにしている人もいる。それもそのはずである。随所に散りばめられたときめくシーンではなく、よりにもよって杏が、大和の気持ちに応えきれなくて泣くというシーンを挙げたのだから。
(…彩羽さんは何でそのシーンを…。)
そう思っていたのは、彩羽の隣にいる知春も同様だったようだ。彩羽の言葉の続きを見守っている。
「確かに胸キュンなシーンも楽しかったし、見てほしいところではありますけど、なんか…そうですね、言いたいことが言えなくて涙になってしまうってところが高校生っぽいっていうか、上手く言えないなら閉じちゃう人あるあるだなと思って。普段は泣くとか笑うとか、大きなリアクションをしない子だったので、ここで我慢できないよね…と思いながら、思いっきり泣かせてもらいました!」
思いっきりと彩羽は言うが、涙自体は静かなシーンだった。静かに、ただほろほろと流れ落ちていく涙が自然で、そして切なくて綺麗だったのを名桜もよく覚えている。
「確かに、切ないシーンでしたよね…。ちなみに伊月さんはいかがですか?」
「…そうですね。彩羽さんが切ないシーンを挙げたんですけど、僕はあの、杏に初めて手を握り返してもらえるシーンを見てもらいたいです。」
「え、なんでなんで?」
司会者よりも早い彩羽のツッコミに、知春は一度目を丸くした後に微笑んだ。
「あとで確認したんですけど、あの時複数のカメラで撮っていただいてて、で、あのシーンに使われた映像はその中から僕が選ばせてもらったんですよ。」
「え、そうだったの?」
「そうだったんですね。」
司会者と彩羽の声が綺麗に重なった。
「気合を入れたシーンはいっぱいあるんですけど…。」
ぐっと拳を握った彩羽に、会場が笑いに包まれる。
「彩羽さん…役柄的に気合とか言うような子じゃなかったじゃないですか…。」
「そこはね、キャラクターと私は別物というかね、ちょっと杏はいい子すぎるっていうか、本当に健気な子だったので…。あ!ここは見てほしいってところ、ありました!杏が一人で泣くところですかね。気に入ってます、あのシーン。」
「結構切ないところじゃないですか、それ。ねぇ?」
司会者がお客さんに話を振る。観客は皆、コクコクと頷いている。中には意外そうにしている人もいる。それもそのはずである。随所に散りばめられたときめくシーンではなく、よりにもよって杏が、大和の気持ちに応えきれなくて泣くというシーンを挙げたのだから。
(…彩羽さんは何でそのシーンを…。)
そう思っていたのは、彩羽の隣にいる知春も同様だったようだ。彩羽の言葉の続きを見守っている。
「確かに胸キュンなシーンも楽しかったし、見てほしいところではありますけど、なんか…そうですね、言いたいことが言えなくて涙になってしまうってところが高校生っぽいっていうか、上手く言えないなら閉じちゃう人あるあるだなと思って。普段は泣くとか笑うとか、大きなリアクションをしない子だったので、ここで我慢できないよね…と思いながら、思いっきり泣かせてもらいました!」
思いっきりと彩羽は言うが、涙自体は静かなシーンだった。静かに、ただほろほろと流れ落ちていく涙が自然で、そして切なくて綺麗だったのを名桜もよく覚えている。
「確かに、切ないシーンでしたよね…。ちなみに伊月さんはいかがですか?」
「…そうですね。彩羽さんが切ないシーンを挙げたんですけど、僕はあの、杏に初めて手を握り返してもらえるシーンを見てもらいたいです。」
「え、なんでなんで?」
司会者よりも早い彩羽のツッコミに、知春は一度目を丸くした後に微笑んだ。
「あとで確認したんですけど、あの時複数のカメラで撮っていただいてて、で、あのシーンに使われた映像はその中から僕が選ばせてもらったんですよ。」
「え、そうだったの?」
「そうだったんですね。」
司会者と彩羽の声が綺麗に重なった。



