リナリア

* * *

「そういえば、彩羽さんとの仕事があったんだって?」
「あっ、はい!彩羽さんに推薦していただいたので、雑誌の撮影を任せていただきまして…。」
「かなり踏み込んだ内容のインタビューだって言ってた、彩羽さんが。」
「そう…ですね。」

 撮影前に事前に教えてもらった彩羽の人生。それは今の彩羽を見たら想像できないものだった。だからこそ、彩羽も軽快な語り口で話していた。重たい部分、つまりはファンや関係者に心配をかけてしまうような部分はぼやかし、それでも伝えたいことは伝わるようにはっきりとした形で質問に答えていた彩羽を思い出す。

「雑誌、今度会ったらくれるって言うから読むつもりなんだけど、名桜は大丈夫だった?」
「私、ですか?」
「うん。踏み込んだ内容ってのもそうだけど、…あの彩羽さんにそういうバックボーンがあるとは思わなかっただろうから。」

 知春の口ぶりから察するに、知春も知っているのだろう。

「知春さんも、聞いていたんですか?」
「タイミング的には名桜よりも後だと思うけどね。『なっちゃんに話したのにちーちゃんに話さないのはフェアじゃないよね』って言って、そんなテンションで話すような話じゃなくて驚いたから。」
「…驚いたといえばそれはそうなんですけど…。」
「うん。」
「過去は変えられないので、できれば彩羽さんがお会いしたい方に伝わったらなって…思っています。」

 名桜が願うのはそこだった。雑誌が世に出るのはまだ先だ。雑誌を手に取るところまではいかなくても、せめてネットニュースで概要がわかる程度に広がってくれたら、届くかもしれない。届いてほしい。そう願わざるを得なかった。

「今はちょっと表舞台には出ないで、楽曲提供とかだけはしてるシンガーソングライターがいるんだけどね。その人も、忘れられない人がいて、歌声はその人に届いていて、多分今は一緒にいるんじゃないかな。」
「えっ!?そんなことがあるんですか?」
「うん。俺、その人好きで結構聴いてたんだけど、突然引退しますってなって、ちょっとショックだったからよく覚えてて。」