* * *
「わからないものをわからないままにしないで、向き合って、解像度を高めていくのもいかないのもそれぞれの人次第だと思いますけど、でも知春さんは真摯に向き合って、形にした。彩羽さんとの演技の中での知春さんは自然で…素敵でした。まるで本当に、恋をしているみたいに。」
名桜の言葉が、知春の耳に真っ直ぐに届いて柔らかく、それでいて確かに響く。
(…恋、を知ってしまったから。)
義姉を想っていた気持ちとは似ているようで、きっと並べたら全く違うものにも見えるのだろう。たとえば手を伸ばして触れたくなるような衝動を以前はもたなかった。今は時折、触れたくなるときがある。ただ、驚かせてしまうと知っているからそうしないだけで。
目で追いかけてしまう。笑いかけてくれたら嬉しい。話せたら嬉しい。もっと頑張れる。そんな単純な思考回路で、本当に頑張れてしまう。撮影中の自分が恋をしているように見えたのならば、それは本当に好きだからなんだと、自分の目は雄弁にそれを語っていたことになる。
「…そうかも。」
「え?」
「彩羽さんに…ではないけど『杏』に、自分が想う人を重ねて見てた節はあったかも。自分が想う人というか、こういう人を好きになりたいなぁみたいな想像上の人というか、そういう存在を重ねてその人を想う自分はこういう風に在りたいって思いながら演じてたと思う。…やっぱり難しくて、ちょっとしばらくは恋愛モノ、遠慮したいな。」
少しだけ混ぜた嘘。自分が想う人はいるのに、言えない。でも、零れてしまいそうな気がする。一体いつまで自分は、誰にも言わずにこの気持ちを持ち続けられるのか。今はもう自信がない。会ってしまえば、言葉を交わしてしまえば揺れる。
もし君が、もっと連絡を取っていい相手になったのならば、どうなるのだろう。
もし君と夜、眠る前に電話ができて、声を聞けるようになったのならば。それはどんなに楽しくて、幸せなことなのだろうと考える。
屈託なく笑顔で話してくれる姿が嬉しいのに、時折もっとと欲が顔を出しそうになる。
「わからないものをわからないままにしないで、向き合って、解像度を高めていくのもいかないのもそれぞれの人次第だと思いますけど、でも知春さんは真摯に向き合って、形にした。彩羽さんとの演技の中での知春さんは自然で…素敵でした。まるで本当に、恋をしているみたいに。」
名桜の言葉が、知春の耳に真っ直ぐに届いて柔らかく、それでいて確かに響く。
(…恋、を知ってしまったから。)
義姉を想っていた気持ちとは似ているようで、きっと並べたら全く違うものにも見えるのだろう。たとえば手を伸ばして触れたくなるような衝動を以前はもたなかった。今は時折、触れたくなるときがある。ただ、驚かせてしまうと知っているからそうしないだけで。
目で追いかけてしまう。笑いかけてくれたら嬉しい。話せたら嬉しい。もっと頑張れる。そんな単純な思考回路で、本当に頑張れてしまう。撮影中の自分が恋をしているように見えたのならば、それは本当に好きだからなんだと、自分の目は雄弁にそれを語っていたことになる。
「…そうかも。」
「え?」
「彩羽さんに…ではないけど『杏』に、自分が想う人を重ねて見てた節はあったかも。自分が想う人というか、こういう人を好きになりたいなぁみたいな想像上の人というか、そういう存在を重ねてその人を想う自分はこういう風に在りたいって思いながら演じてたと思う。…やっぱり難しくて、ちょっとしばらくは恋愛モノ、遠慮したいな。」
少しだけ混ぜた嘘。自分が想う人はいるのに、言えない。でも、零れてしまいそうな気がする。一体いつまで自分は、誰にも言わずにこの気持ちを持ち続けられるのか。今はもう自信がない。会ってしまえば、言葉を交わしてしまえば揺れる。
もし君が、もっと連絡を取っていい相手になったのならば、どうなるのだろう。
もし君と夜、眠る前に電話ができて、声を聞けるようになったのならば。それはどんなに楽しくて、幸せなことなのだろうと考える。
屈託なく笑顔で話してくれる姿が嬉しいのに、時折もっとと欲が顔を出しそうになる。



