「名桜。」
「はい。」
「ちょっと、手を貸してもらってもいい?」
「手、ですか?」
名桜はそう言うと、カメラから手を離して知春に向き合った。
「手、どうしたらいいですか?」
「両手でもいい?」
「はい。」
知春の手が名桜の両手を下からぎゅっと握った。
「…知春さん?」
名桜の手をぎゅっと握ったまま、知春は静かに目を閉じた。柔らかな髪が風に揺れる。
「チャージ。」
「チャージ…?何を、ですか?」
「たくさんのものを生み出す名桜の手から、ちょっとだけエネルギーを貰いたくて。」
「エネルギー…お疲れですか?」
「…うん。心地よい疲れだけどね。」
特別な手だと、知春は思う。こんなことを言ったら失礼なのは承知で言うが、彩羽の手に触れても特別だとは思わない。それは過去に共演し、それこそ想いを寄せる相手の役を演じた俳優たちに対してもそうだった。ただの触れる、という行為。演技でしかない、その役だから触れるだけ。そこに演技以上の意味は見いだせない。だが、名桜はどうやら違うようだ。
「…じゃあ、もっと元気になれるように。」
名桜の手が知春の手をぎゅっと握り返す。目を閉じていた知春ははっとして目を開け、名桜を見つめた。そこには優しく微笑む名桜がいた。
後夜祭で見た名桜の表情にざわついた気持ちが戻ってくる。可愛いと呟いた心が顔を出す。名桜の手を引いて抱き留めた時の重みと香り、そして温度を思い出してしまう。ぼやけていた、多分正確に言えばぼやかしていた感情に、輪郭ができてしまう。
「…ありがと。すっごい元気出た。百人力だね、さすが。」
「そんな力はないですよ!」
「あるよー。」
そう言って、知春はそのままゆっくりと体を前に倒して、額を名桜の肩にそっとつけた。重みはかけすぎてはいけないと配慮はしながら。
「知春さん…?」
知春の耳元で驚いたような名桜の声が響く。知春はゆっくりと呼吸した。ふわりと香る名桜の香りを吸い込むと、心拍数が上がるものの安心もする。そこに確かにいる、と感じられて。
「…名桜はすごい。ほんとに、そう思う。」
手に触れるだけで、傍にいるだけで頑張る力を与えてくれるのだから。
「はい。」
「ちょっと、手を貸してもらってもいい?」
「手、ですか?」
名桜はそう言うと、カメラから手を離して知春に向き合った。
「手、どうしたらいいですか?」
「両手でもいい?」
「はい。」
知春の手が名桜の両手を下からぎゅっと握った。
「…知春さん?」
名桜の手をぎゅっと握ったまま、知春は静かに目を閉じた。柔らかな髪が風に揺れる。
「チャージ。」
「チャージ…?何を、ですか?」
「たくさんのものを生み出す名桜の手から、ちょっとだけエネルギーを貰いたくて。」
「エネルギー…お疲れですか?」
「…うん。心地よい疲れだけどね。」
特別な手だと、知春は思う。こんなことを言ったら失礼なのは承知で言うが、彩羽の手に触れても特別だとは思わない。それは過去に共演し、それこそ想いを寄せる相手の役を演じた俳優たちに対してもそうだった。ただの触れる、という行為。演技でしかない、その役だから触れるだけ。そこに演技以上の意味は見いだせない。だが、名桜はどうやら違うようだ。
「…じゃあ、もっと元気になれるように。」
名桜の手が知春の手をぎゅっと握り返す。目を閉じていた知春ははっとして目を開け、名桜を見つめた。そこには優しく微笑む名桜がいた。
後夜祭で見た名桜の表情にざわついた気持ちが戻ってくる。可愛いと呟いた心が顔を出す。名桜の手を引いて抱き留めた時の重みと香り、そして温度を思い出してしまう。ぼやけていた、多分正確に言えばぼやかしていた感情に、輪郭ができてしまう。
「…ありがと。すっごい元気出た。百人力だね、さすが。」
「そんな力はないですよ!」
「あるよー。」
そう言って、知春はそのままゆっくりと体を前に倒して、額を名桜の肩にそっとつけた。重みはかけすぎてはいけないと配慮はしながら。
「知春さん…?」
知春の耳元で驚いたような名桜の声が響く。知春はゆっくりと呼吸した。ふわりと香る名桜の香りを吸い込むと、心拍数が上がるものの安心もする。そこに確かにいる、と感じられて。
「…名桜はすごい。ほんとに、そう思う。」
手に触れるだけで、傍にいるだけで頑張る力を与えてくれるのだから。



