名桜の言葉を聞いて、彩羽はにかっと笑う。杏のときには見られない、きっと素の表情だ。
「仕事上では役職が違うけど、仕事じゃないところでは同じ人間だから立場は同じじゃない?」
「それはそうかもしれませんが…。」
「いきなり友達になろう、ってことじゃないけど、でもちーちゃんみたいに、仕事の話もそうじゃない話もしてみたいなって思ったの。嫌じゃなかったらでいいので。」
「嫌なんかじゃ、ないです!」
名桜は差し出された手を両手で包んだ。ブンブンと振ることはさすがにできないが、少しだけ力を入れて握ってみる。
「…お話、していただけたら嬉しいです。人とお話しするのが少し、緊張してしまうので…。そういう私で良ければ…。」
名桜の返答に、彩羽はにっこりと微笑んだ。
「ありがと!撮影は撮影で仕事モードでバリバリやるけど、隙間の時間は色々喋ろうね!」
「…わ、話題は提供…するものがないかもしれません…。」
「え?まずはちーちゃんとの出会いから洗いざらい話してもらうよー。なっちゃん、ちーちゃんと話してるとき、全然緊張してるみたいな雰囲気なかったから、それがどうやってそうなったのかも気になるし。」
「…緊張している雰囲気、なかったですか?」
「全然ないよ。対等に意見言い合って、こうしたい、やってみようみたいな、クリエイティブな感じだったよ。」
「…知春さんと対等って、ちょっと私、偉そうですね…?」
「あはは、全然そんなことないって。偉そうとかには見えなかったよ。楽しそうだった、二人とも。だから『背中合わせの恋心』が上手く出せたんだし。…ちょっとちーちゃんにしてやられた面もあったけど。」
少しだけ唇を尖らせて、彩羽は言った。
「なっちゃんと仕事するの、楽しいってちーちゃんが言ってたんだよね、撮影前に。」
「そうだったんですか?」
「うん。それがね、ちょっとわかった気がした。だから、楽しい上に出来上がるものはいい、そういう仕事を一緒にしよう。…よろしくね?」
大きな瞳の片目が、パチンと音を立てたかのようにばっちりと閉じられてウインクが決まる。華のある、それでいて茶目っ気たっぷりの俳優、それが兼坂彩羽。
「兼坂さん、よろしくお願いします。」
「あっ、固い固い!彩羽って呼んで。私もなっちゃんって呼ぶし。」
「さ、さすがに呼び捨てはできないので、彩羽さんで…お願いします。」
「うん。」
今日一番の笑みが返ってきて、名桜もそれに応じるかのように微笑んだ。
「仕事上では役職が違うけど、仕事じゃないところでは同じ人間だから立場は同じじゃない?」
「それはそうかもしれませんが…。」
「いきなり友達になろう、ってことじゃないけど、でもちーちゃんみたいに、仕事の話もそうじゃない話もしてみたいなって思ったの。嫌じゃなかったらでいいので。」
「嫌なんかじゃ、ないです!」
名桜は差し出された手を両手で包んだ。ブンブンと振ることはさすがにできないが、少しだけ力を入れて握ってみる。
「…お話、していただけたら嬉しいです。人とお話しするのが少し、緊張してしまうので…。そういう私で良ければ…。」
名桜の返答に、彩羽はにっこりと微笑んだ。
「ありがと!撮影は撮影で仕事モードでバリバリやるけど、隙間の時間は色々喋ろうね!」
「…わ、話題は提供…するものがないかもしれません…。」
「え?まずはちーちゃんとの出会いから洗いざらい話してもらうよー。なっちゃん、ちーちゃんと話してるとき、全然緊張してるみたいな雰囲気なかったから、それがどうやってそうなったのかも気になるし。」
「…緊張している雰囲気、なかったですか?」
「全然ないよ。対等に意見言い合って、こうしたい、やってみようみたいな、クリエイティブな感じだったよ。」
「…知春さんと対等って、ちょっと私、偉そうですね…?」
「あはは、全然そんなことないって。偉そうとかには見えなかったよ。楽しそうだった、二人とも。だから『背中合わせの恋心』が上手く出せたんだし。…ちょっとちーちゃんにしてやられた面もあったけど。」
少しだけ唇を尖らせて、彩羽は言った。
「なっちゃんと仕事するの、楽しいってちーちゃんが言ってたんだよね、撮影前に。」
「そうだったんですか?」
「うん。それがね、ちょっとわかった気がした。だから、楽しい上に出来上がるものはいい、そういう仕事を一緒にしよう。…よろしくね?」
大きな瞳の片目が、パチンと音を立てたかのようにばっちりと閉じられてウインクが決まる。華のある、それでいて茶目っ気たっぷりの俳優、それが兼坂彩羽。
「兼坂さん、よろしくお願いします。」
「あっ、固い固い!彩羽って呼んで。私もなっちゃんって呼ぶし。」
「さ、さすがに呼び捨てはできないので、彩羽さんで…お願いします。」
「うん。」
今日一番の笑みが返ってきて、名桜もそれに応じるかのように微笑んだ。



