リナリア

* * *

「それで、二人はどういうご関係で?」
「えっと、どういう関係というものもないというか…。」

 軽いメイク直しと休憩の時間に彩羽に腕を掴まれた名桜は、今彩羽のメイク直しを見つめている。知春はといえば別室でメイク直し後、ソロポスター撮りを葉月が行う手はずになっているため、今ここにはいない。

「ちーちゃんが呼び捨てで呼ぶ子が、関係のない子なわけないよね?」
「…えっと、私が高校の後輩だから…だと思います。」
「高校の後輩!?」
「先にお会いしたのは…現場で、ですけど。その後に高校が同じということがわかりまして…。」
「そんなことあるの!?」

 思っていた以上によく通る大きな声でそう言われて面食らったのは名桜だった。目を丸くする名桜に、彩羽は慌てたように口を開いた。

「ごめんごめん!声が大きいんだよね、実は。でもそっかぁ、なるほど。仕事だけじゃなくて、高校でも接点があったのね。」
「そうですね。現場で顔を合わせることと、学校で会うことが半々という感じで…。」
「仕事以外の接点は?」

 鏡越しに合う目は曇りなく真っすぐだ。名桜は少したじろいだ。仕事以外の接点はないわけではない。ただ、自分のことはさておき知春は芸能人で、あらぬ噂は立てられない方がいい。彩羽が何を知りたくて知春との接点を尋ねてきているのかはわからないが、話がどう転ぶにせよ誤解をさせるような不用意な発言は控えなくてはと思えば思うほど、言葉選びに慎重になってしまう。

「全くない、とは言いませんが…そうですね、兼坂さんがどういった関係だと思っているかによって、私の答えは変わります。」

 名桜が言った通りの言葉で彩羽が受け取ってくれているのであれば、誤解は恐らくない。しかし、そうではない何かを勘ぐっているのであれば、それにはノーと言うしかない。

「よーし、じゃあまどろっこしいのはなし!単刀直入に聞こう。ちーちゃんの彼女なの?」
「へっ?か…彼女…?そ、そんなわけないです!知春さんの彼女じゃないです、というか誰の彼女でもないです!」

 慌てて全てを否定したため、名桜の方もやや大きい声になってしまって、言い終わった後に周りをきょろきょろしてしまった。