リナリア

「名桜?」
「あっ、すみません!そういえばこうやって演技中の知春さんを撮影させていただくのは初めてだったなと思いまして。」
「あー…そっか、確かに。いつもは雑誌の撮影とかそういうのだったね。」
「二人の関係、気になる~!」

 彩羽がにゅっと、知春と名桜の間に顔を出す。ほのかに香る少し甘い香りに慣れなくて、名桜の心に少しだけ緊張が走る。

「さっきの写真、確認してもらって大丈夫だったら少し休憩挟むよね?二人のこと、聞きたいなー。」
「…彩羽さん。まずは確認してもらいましょう、写真。」
「はーい!」

 撮った写真を葉月がいるところまで持っていき、パソコンに取り込んで確認する。葉月が前のめりに画面に向かっている姿を見ると、余計に緊張する。自分の写真は、父の師匠のお眼鏡にかなうのかどうか、表情からは読み取れない。

「二人はどれがいい?」

 知春と彩羽の方をくるりと向いた葉月が、そう問う。知春はすっと画面の前に近付くと、何枚か見比べてすぐに一枚を選び出した。

「僕はこれが好きです。」
「おぉ、そうか。兼坂さんは?」
「…私は、こっちかな。」

 知春が選んだのは、大和に突然手を握られてはっとした表情が印象的な一枚で、彩羽が選んだのは背中合わせのまま、視線の先が交差する一枚だった。

「俺も選ぶならそれだなと思ったよ。あと、この辺も原作に近い感じじゃないかな?」
「はい。こっちと迷いましたけど、せっかくなのでこれを僕はプッシュしようと思います。」
「ちーちゃん、ちょっと嫌がらせでしょ?」
「そんなことないですよ。」
「名桜。」
「はっ、はい!」
「いい写真だ。…父親と同じで、そうやってコミュニケーションを取りながら撮影を組み立てていくタイプなんだな。」
「ありがとうございます。」

 名桜は深く頭を下げた。