リナリア

「あの、まず少し説明よろしいですか?」
「うん!」

 彩羽といえばニコニコしている。名桜は困惑したまま、言葉を続けた。

「現在もこの『桜が咲く頃に君と』は連載中でして、最近歴代の扉絵の中から人気投票をしたんです。結果がこちらです。」

 名桜が二人に見せたのは、上位に食い込んだらしい扉絵の一覧だった。

「お二人は制服ですので、この上位3つと、少し離れますがこの8位のものあたりでしたら良さそうかなと思っています。」
「これは何に使うの?」
「実写化決定というお知らせと、お二人が出演なさるということ、原作にこのくらい近付けていますというアピール。それらを少女漫画誌で行う際に載せるものの撮影を担当します。イメージはこれら4つで、背景は合成です。ポージングや二人の距離感などはこのような形で撮りたいのですが、ご意見などありますか?」
「私もこの扉絵好きだったんだー。お互いのことちょっと気にして、目線被ってないけど見ようとしてるの可愛いよね。」

 彩羽が食い気味に名桜が用意した扉絵のコピーを見つめている。

「お二人の心の距離はおそらく3位、1位、8位、2位の順で近付いているのでこの順で撮影できたら自然かなと思うのですが、大丈夫ですか?」
「うわ、すごい。そんなことまで考えてるんだ!」
「…自然に近付く距離が、大事なんじゃないかって…その、おこがましくも思いまして…。」
「ありがとう!私は名桜ちゃんの案に大賛成だけど、ちーちゃん、なんかある?」
「いえ。これでやりましょう。名桜、ちょっとちゃんと見せてもらってもいい?」
「はい。こちらです。」

 名桜の隣に知春はすっと立った。

「これ、立って撮ったらこの身長差にならないから椅子か台か、どっちかに乗ったほうが良さそうだね。」
「そうですね。台が映らないように、知春さんたちのこの辺りで切って撮りますね。」

 名桜は知春の膝あたりのところを手で示した。

「あっ、それと…あの、一つ試したいことがありまして。」
「試したいことー?」
「何?」
「二人が初めて手を繋ぐシーンを、やっていただけますか?」