「現場でさ、大体知春さん、知春くん、伊月くん、伊月さん…まぁ、大体その辺でしょ、呼ばれ方って。」
「そうですね。私は父の知り合いの方ですと名桜ちゃんって呼ばれることもありますけど…でも基本はさん呼びですね。」
「ちーちゃん。」
「ち、ちーちゃん…?」
知春も困惑顔だが、復唱した名桜だって負けず劣らずの困惑顔だ。
「過去の俺が出てた作品をほとんど全て観ていて、演技が好きって言ってくれたんだけど…というか、そこまでは良かった。」
「なるほど?」
「距離を縮めるためにあだ名をつけてもいい?って…普通初回でならないよね?」
「…初回で…あの、想像以上に社交的な方なんですね。」
「嫌ですとも言えなくて、ちーちゃんになった。」
少し拗ねたような言い方と、知春にしては珍しい表情に名桜はふっと小さく笑った。
「…あ、笑った。他人事だと思って。名桜も明日は我が身だから。」
「あだ名ってつけてもらったことがないので、…私もつけていただけるんですかね?」
「俺がプッシュする。名桜も巻き込む。」
「ご、ご挨拶は必ずさせていただきますけど!でも撮影の邪魔は絶対しませんので!二人が話しているところに割って入るのも変ですし。」
「変?なんで?」
「私は裏方です。こうやってカメラ越しに皆さんを見つめて、切り取りたい一瞬を残す。それが私のやりたいことであり、仕事でもありますから。」
名桜はカメラを構えた。フォークダンスが始まって、先ほどの喧騒とは少し違った空気と音が流れる空間にレンズを向ける。
「本当は拡大して撮りたいくらい、いい表情なのに。…それを残せないのはちょっともどかしいですけど。」
「いい表情?」
「はい。」
名桜はレンズを覗いたまま、言葉を続けた。
「何気なく手を繋ぐ人、その手を繋ぐという行為に意味がある人。…ちゃんとその表情には違いがあって、実際に切り取ることは難しくても、記憶の中では切り取りたいって思っている人もいそうだなって。」
シャッターを切る音が止まる。ゆっくりと名桜がレンズから顔を離して、知春の方を向いた。
「そうですね。私は父の知り合いの方ですと名桜ちゃんって呼ばれることもありますけど…でも基本はさん呼びですね。」
「ちーちゃん。」
「ち、ちーちゃん…?」
知春も困惑顔だが、復唱した名桜だって負けず劣らずの困惑顔だ。
「過去の俺が出てた作品をほとんど全て観ていて、演技が好きって言ってくれたんだけど…というか、そこまでは良かった。」
「なるほど?」
「距離を縮めるためにあだ名をつけてもいい?って…普通初回でならないよね?」
「…初回で…あの、想像以上に社交的な方なんですね。」
「嫌ですとも言えなくて、ちーちゃんになった。」
少し拗ねたような言い方と、知春にしては珍しい表情に名桜はふっと小さく笑った。
「…あ、笑った。他人事だと思って。名桜も明日は我が身だから。」
「あだ名ってつけてもらったことがないので、…私もつけていただけるんですかね?」
「俺がプッシュする。名桜も巻き込む。」
「ご、ご挨拶は必ずさせていただきますけど!でも撮影の邪魔は絶対しませんので!二人が話しているところに割って入るのも変ですし。」
「変?なんで?」
「私は裏方です。こうやってカメラ越しに皆さんを見つめて、切り取りたい一瞬を残す。それが私のやりたいことであり、仕事でもありますから。」
名桜はカメラを構えた。フォークダンスが始まって、先ほどの喧騒とは少し違った空気と音が流れる空間にレンズを向ける。
「本当は拡大して撮りたいくらい、いい表情なのに。…それを残せないのはちょっともどかしいですけど。」
「いい表情?」
「はい。」
名桜はレンズを覗いたまま、言葉を続けた。
「何気なく手を繋ぐ人、その手を繋ぐという行為に意味がある人。…ちゃんとその表情には違いがあって、実際に切り取ることは難しくても、記憶の中では切り取りたいって思っている人もいそうだなって。」
シャッターを切る音が止まる。ゆっくりと名桜がレンズから顔を離して、知春の方を向いた。



