ファインダー越しに見たステージ上では丁度蒼が歌っていた。歌うと蒼はこんなにいい声をしていたのか、と新たな発見をしながらシャッターを切る。この写真では蒼だとわかってしまうから学校では使えないけれど、七海と蒼と3人で楽しむ用の写真として、もう少し撮りたい。
「ステージ、蒼くんじゃない?」
「そうです。いい声ですね、歌声。歌が上手いって知らなかった。」
ファインダーを覗いたまま、名桜は答える。
「きゅんとした?」
知春から聞き慣れない言葉が出てきて、名桜は思わずカメラを下ろした。
「…『きゅん』?」
「ギャップは『きゅん』らしいよ。」
「…ギャップと言われればそうかもしれませんが、きゅん…難しいですね。」
「難しいよね。何か、本当に自分は誰かを恋愛的な意味で好きだったのかなって、自分の気持ちすら疑いたくなる。」
「…それは、疑わなくてもいいんじゃないですか?」
「なんで?」
後夜祭で盛り上がる校庭を見下ろしながらするような話では、きっとない。それでも名桜は知春をまっすぐに見つめて言葉を続けた。
「私の涙もそうですが、知春さんの涙も本物だったと思うからです。」
「…そっか。」
音楽の音、生徒たちの歓声、話し声。様々な音のおかげで、二人の間に沈黙は落ちずにいてくれる。
「そういえばなんですけど、知春さんの映画に私も参加できることになりました。」
「え、そうなの?」
「参加と言っても見習いというか、今後の勉強としてなんですけど。」
「今後の勉強?」
「はい。メインのスチールカメラマンが父の師匠だそうで。本当は父が映画のスチールカメラマンとして呼ばれそうだったらしいのですが、もうすでに別の仕事が入っていて無理だったんですね。師匠である葉月さんが代わりを申し出てくださったとのことで。葉月さんが現場を見に来て勉強するかと声を掛けてくださったので、ぜひと言いました。」
「じゃあ名桜、現場にいるんだ。」
「全日程とまではいかないかもしれませんが、ポスター撮影やパンフレットの撮影など、カメラ撮影がメインの時間帯は行きます。それ以外も学業に支障がない程度に参加させていただく予定です。」
「…こう言ったら甘えに聞こえるかもだけど、すぐ相談できる名桜がいてくれるの、結構安心する。…ありがとう。」
「相談されても、すぐに答えが出せるわけじゃないんですけどね…すみません。さっきの『きゅん』も、私にはやっぱりうまく説明できないですし。」
空いている名桜の手に、知春の手が触れた。少し触れるだけで、握るでもなく、指が絡むわけでもない。
「ステージ、蒼くんじゃない?」
「そうです。いい声ですね、歌声。歌が上手いって知らなかった。」
ファインダーを覗いたまま、名桜は答える。
「きゅんとした?」
知春から聞き慣れない言葉が出てきて、名桜は思わずカメラを下ろした。
「…『きゅん』?」
「ギャップは『きゅん』らしいよ。」
「…ギャップと言われればそうかもしれませんが、きゅん…難しいですね。」
「難しいよね。何か、本当に自分は誰かを恋愛的な意味で好きだったのかなって、自分の気持ちすら疑いたくなる。」
「…それは、疑わなくてもいいんじゃないですか?」
「なんで?」
後夜祭で盛り上がる校庭を見下ろしながらするような話では、きっとない。それでも名桜は知春をまっすぐに見つめて言葉を続けた。
「私の涙もそうですが、知春さんの涙も本物だったと思うからです。」
「…そっか。」
音楽の音、生徒たちの歓声、話し声。様々な音のおかげで、二人の間に沈黙は落ちずにいてくれる。
「そういえばなんですけど、知春さんの映画に私も参加できることになりました。」
「え、そうなの?」
「参加と言っても見習いというか、今後の勉強としてなんですけど。」
「今後の勉強?」
「はい。メインのスチールカメラマンが父の師匠だそうで。本当は父が映画のスチールカメラマンとして呼ばれそうだったらしいのですが、もうすでに別の仕事が入っていて無理だったんですね。師匠である葉月さんが代わりを申し出てくださったとのことで。葉月さんが現場を見に来て勉強するかと声を掛けてくださったので、ぜひと言いました。」
「じゃあ名桜、現場にいるんだ。」
「全日程とまではいかないかもしれませんが、ポスター撮影やパンフレットの撮影など、カメラ撮影がメインの時間帯は行きます。それ以外も学業に支障がない程度に参加させていただく予定です。」
「…こう言ったら甘えに聞こえるかもだけど、すぐ相談できる名桜がいてくれるの、結構安心する。…ありがとう。」
「相談されても、すぐに答えが出せるわけじゃないんですけどね…すみません。さっきの『きゅん』も、私にはやっぱりうまく説明できないですし。」
空いている名桜の手に、知春の手が触れた。少し触れるだけで、握るでもなく、指が絡むわけでもない。



