リナリア

「ただ、選択肢として入れておいてくれって話。」

(我ながらこの言い方はずるい。…とはちゃんと思ってるから。)

「拓実。」
「ん?」
「…冗談なんかでこういうこと言う人じゃないって私は思ってるんだけど。」
「うん。さっきの言い方は、やっぱずるかったよな。」

 だからこそ目を見てまっすぐに言わなくてはならない。

「椋花のことが割と前から、ちゃんと好きだよ。友達としてもだけど、それ以上にと思うくらいには。」

 言った後に顔に熱が集中してくる。少しずつ暑さが和らぐ9月だというのに、それも夜で、今日はそこまで暑くはないはずなのに。

「…はぁ…。もう突然、何なの。」
「いや、もう言ったれって気分になった。」
「気分で動かれたらこっちも困るんですけど。」

 椋花は、左腕を上げて顔を隠している。告白こそ目が合ったが、最後まで聞いた途端に目を逸らされてしまった。

「明日から。」
「ん?」

 初めて見る潤んだ目に、拓実の心拍数が上がる。

「…明日から、どんな顔して学校に来たらいいわけ?」
「っ…。」

 少しだけ恨みがましく睨んだ目がゆらゆらと揺れるから、一段と可愛く見える。

「…明日から避けても、怒んないでよ。」
「怒んない。俺が悪いし。」
「…ほんとだよ。」
「でも、言ったことは撤回しない。」
「したら怒る。」
「え?」

 椋花の左腕がゆっくり下りて、再び目が合う。

「嘘でこんなこと言ってたら、嫌いになるから。たとえ拓実だって。」
「知ってんよ。だから椋花に嘘はつかない。ついたことねーよ。」

(嫌いになるからってことは、今は嫌いじゃないってことで合ってるよな?)

「あーもう!拓実のばか!ほんと最後の最後に爆弾落とすから嫌だ!」
「ごめんって。まぁでも、気が向いたら返事して。」
「し、しばらく向かないからね、気は!」
「はいはい。」