「でも拓実にはさ。」
「うん。」
「私が知春を好きなように見えたってことだよね?」
「ん-…まぁ、付き合い長いからな。」
「ばれるほどというか、そこまでわかりやすくしてなかったと思うんだけどな。」
「…まぁ、普通にクラスメートとかにはばれてねーと思うよ。」

 一押し、してみてもいいのだろうか。そう思った時には口が滑っていた。

「椋花のことだから、俺が周りより、『よく』見てただけ。」
「!?」

 いきなりバチっと目があった。薄暗くて顔の色まではよくわからないが、椋花の表情は今までみたことのないものに変わっていた。

「…拓実さぁ、他意なく言ってるってわかってるけど驚くからやめてよ。」
「他意あるけど。」
「は!?」
「いやまぁ、喋っちゃって俺が一番びっくりしてるけど。そんな反応返してくれんだって。」

 少しだけ拓実が距離を詰めると、椋花が後ずさった。

「な、なに…?」
「そんな警戒すんなって。とって食おうってことじゃねーんだから。」
「当たり前でしょ!」

 後ずさった先のほうが明るかったのか、椋花の顔色が少しわかる。照らされているからというのもあるが、ほんのりと赤い。目が泳いでいて、動揺しているのがありありと伝わってくる。

「知春のことしか見てなかっただろうから俺の視線に気付かねーのも、別に全然いいけど。でも、そういう椋花を見てたやつはいるって宣言しておこうかと。」
「なんで今…!」
「最初にトリガー引いたのそっちだろ。知春のことが好きって言われてたら言うつもりなかったわ。」
「い、意味わかんな…。」
「…別に、今すぐ恋愛として好きになってくれとも、付き合ってくれとも、特別視してくれとも言うつもりはねーよ。」

 拓実らしからぬ真っすぐで落ち着いた声に、椋花の心臓はドクンドクンと激しくなる。