リナリア

 写真部の展示のコーナーは空いていた。

「あっ、俺らいるじゃん。」
「ここまで枚数あると迫力あるね。」
「うちのクラスに来てた写真部の子はあの子だけだから、この写真は全部…。」
「名桜のカメラだね。」

 各学年、各クラスごとにわかれた文化祭準備中の写真が、大きな掲示板に所狭しと貼り付けられている。拓実が見つけた1枚は、知春、椋花、拓実の3人で楽しそうに笑っているものだった。

「準備期間も結構楽しかったよね。大変ではあったけど。」
「俺はふつーにキツかったな。王子とかガラじゃねーし。」
「まだ終わってないよ…。これからが本番じゃん。」
「緊張してる?」
「いや、全然。始まっちまったらどうとでもなるし、転がすしかないじゃん。」
「強いなぁー…鋼の心臓。」
「あ、もしかして知春の方が緊張してる?」
「ドラマと違って一発本番じゃん。撮り直しきかないし、舞台ってそういえば初めてだったってことを、みんなと練習してたら気付いた。」
「抜けてる~!」
「そのくせ王子より王子らしいから困るよな、まじで。」

 小さな笑い声が、人気の少ない掲示板の間で響く。

「奥の方にもまだあるみたいだね。」
「名桜ちゃんのソロでなんか作品、あるんじゃねーの?」

 さらに3人で進んでいくと、教室の奥にモノクロが2枚とカラーが一枚の組写真のパネルがあった。

「リナリア。」
「…モノクロの写真も撮るの?」
「うん。前に見せてもらったこと、ある。」

 咲きかけのリナリア、満開のリナリア、そしてカラーのものはリナリアに触れる手。

「あんな忙しいのに、こんなのいつ撮ったんだか…。」

 あの穏やかな日差しを思い出す。学校で会ったのは、あの日が初めてだった。あの日に名桜が切り取りたかった一瞬は、今ここに切り取られてある。