「教室に戻りなさい」

「先生、何があったんですか。教えてください」

桃香が私の代わりに担任の先生に聞いてくれた。

「お前たちには関係ない。戻りなさい」

「関係あるんです!先生、信じてください。神野先輩が殴ったのって迫田先生ですよね」

担任は、少し驚いた顔をして、周りを見てから私達を職員室の端へと連れて行く。


「どうして知ってるんだ。何があった?」

「神野先輩は悪くないです。私が、巻き込んでしまったんです」

私がそう言うと、困ったような声で

「そう言われてもどうしたらいいのか。詳しく聞かせてくれるか?」

私は、迫田とのことを学校に言うのが怖かった。

マナ先輩も、迫田に復讐されたら怖いから、と心配してくれていたもん。


「私と迫田先生がちょっとトラブルでもめていたのを、神野先輩に相談したんです。だから、それが原因だと思います」

「そうか。そうかもしれないが、神野は誰も関係ない、俺の問題だと言ってる。迫田先生も、理由もなくいきなり殴られた、と言ってるんだが」


それは私を守るための嘘だよ。

優しいマナ先輩の優しい嘘。