「日野っち!久しぶりだよね」

「桃、この子の友達だったんだ」

日野さんは、私に視線をうつしてそう言った。

「そうだよ!同じクラスで仲良くなったんだよね~」
と体を寄せてきた桃香を見て、日野さんは、あきれたように笑う。

「世話の焼ける友達持ったねぇ」

日野さんはそう言って、私の鞄に自分の鞄をぶつけた。

「そんなぁ、日野さん。私、日野さんだけが頼りなんだよぉ」

「こら、甘えるな!!」

日野さんの優しさはわかってる。

照れ屋だから、こんなこと言ってるだけで、いつも私のこと見守ってくれてるんだもん。


「日野っち、私もテニス部入ろうかなと思うんだけど」

桃香の真剣な瞳を見ていると、きっと本気なんだろうと思う。

「桃、覚悟決めてから入らないと後悔するよ。ハナが今どんな嫌がらせされてるか知ってんだよね」

日野さんに自然な感じで“ハナ”って呼ばれたことに感激している私。

「それは、わかってる。でも、私わかるんだよね。ハナちゃんを嫌いになる理由なんて何もないじゃん。こんないい子をいじめるなんてわけわかんない。だから、今だけだと思うんだ」

そんな風に思ってくれているなんて、と嬉しくてニヤけてると、日野さんは言う。

「甘いなぁ、桃は。なんせ、原因は迫田だからね。女の嫉妬は怖いよ」

「え?どういうこと?」

何もしらない桃香に、日野さんが軽く説明してくれた。

迫田に気に入られてることで先輩達からも嫉妬されていること。
先輩だけじゃなく、1年の中にも迫田を好きな子がいて、それでいじめがひどくなったこと。

改めてこう説明されると、私ってイジメられてるんだよね。

イジメって、自分には無関係なことだって勝手に思ってた。

でも、今私たちがいるのは、いつどこでいじめられるかわからない世界なんだ。