ポトリとテニスコートに落ちたのは、汗じゃなく涙だった。 「やっぱり、ハナばっかりだね」 「ニコニコしてると得だね、ハナ」 私、崎山花菜【サキヤマハナ】 高校1年生。 高校生活はまだ始まったばかりだというのに、人生初のいじめってのを受けている。 これはまだいじめではないのかもしれない。ただの嫌がらせなのか。 5月の空は、青というより水色に近い色で、とても綺麗だった。 「今日、もう帰ります」 部活を抜け出し、ひとり空を見上げながら涙がこぼれないように目を大きく開けて、歩く。