数年後にはイケメン道中真っしぐらであろう可愛いさダダモレの彼が言った。

「お待たせしました。こちらへどうぞ。」

相手も慣れた身振りで応対する。

志穂は左へ続く通路を

そのキュートくんの後ろについて歩いた。

5、6歩行くと右手のつい立てが途切れ

いきなりオフィスが現れた。

30名はいるだろう広いフロアが目にまぶしかった。

なぜなら窓が大きくて明るく

その開放的な職場環境をうらやましく思ったからだ。

電話が鳴ったりガヤガヤと話し声が聞こえたり

朝のオフィスが何かと騒がしいのはどこでも同じだ。

通路側に一番近い席にいた男性社員をチラリと見た。

それはかなりマズい行動だった。

バッチリと目が合ってしまい

最初の気まずい思いは一瞬でかき消え

次の一歩で

そのイケメン度がハイレベルすぎることに

通常の数倍もの後ろめたさを隠しつつ

前を向いて通り過ぎたが

好奇に満ちた他約30名の目にずっとさらされ

志穂は心持ち顔を下にして歩を進めることになった。

「こちらへどうぞ。奥の席にお掛けになってお待ちください。」

ミーティングルームに通された。

キュートくんは部屋を出て行った。