私は、いつもの学校から家に続く道を歩いていた。


いつもなら、学校が終わった途端 早く家に帰ろうとテンションが高くなるのだが、今日ばかりはそんな気になれなかった。



そういうのも……






「はぁ……お義父さん もう家についてるのかな……」






そう、今日は義父が家に帰ってくる日なので、元気がなかったのだ。

そのまま家に帰るのが嫌になり私は 通りかかった神社の鳥居をくぐり本堂の前の階段に腰掛けた。

今では、ほとんど人が立ち入らなくなったこともあり、境内には伸びきった雑草や落ち葉があちこちに散らかっていて、この神社の住職がいないのも一目瞭然だった。

だから、鳥居も石畳も、もちろん本堂もボロボロだった。



普通、こういうところに来ると大抵の女の子は怖がるところだが今の私はそんなことも無く、むしろ今はこういうところにいるほうが落ち着いた。



しばらく 膝を抱え顔を埋めているとどこからともなく声が聞こえてきた。












────……め……娘…







「……誰……?」







今の私は驚くほど冷静だった。だが、頭に響いてくる声は嫌いだ。あの夢を思い出すから……








────こんなところで、どうした? 娘







「……別に、どうでもいいでしょ……?あなたには関係ないんだから……」








ちょっと反抗的な言い方になり私は、内心「しまった……」と思ったが、声の主はさして、気にも止めず








────そうか……







と返してきた。








────ならば なぜ お前は涙を流す







「え……?」







言われて、初めて私が泣いていることに気づいた。私は慌てて手の甲で涙を拭った。







────人とは 弱く脆い 存在だ いとも簡単に傷付き 涙を流す






「………………」







────…だが、そこには涙を拭い 支えてくれる友がいる のぅ?娘よ






「っ…………いないよ……もう……」






そう、私には もう……







「私は あの家の子じゃない……あの人達は本当の家族じゃないから!!」






そこまで言って、私はハッとなって口を塞いだ。






(私……なんてこと言ってしまったんだろう……)







確かに、あの人達は本当の親じゃない。なのにお義母さんは私のことを実の娘のように接してくれていたというのに……お義祖母ちゃんだって……






「………………」






────……生きにくいか?






「そんなこと、……ない……」






────だが、我には娘が生きにくそうに見えておる のぅ?娘 ……こっちへおいで……いや、違うか こっちへ ''戻っておいで''






「えっ」






私はパッと顔を上げると同時に眩い光に包まれ意識を失った。






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