フレキシブル・ソウル


朝起きると、うだるように暑い木曜日の始まり。

果たして私は、今日を終えることができるのか。



「新ぁ、だいじょぶ?」

「ん、寝すぎて身体痛い」

「土曜さ、遠藤くんが、四人で行ったらいいんじゃないのって、どう?」



教室の戸をくぐりながら、土曜? と首をひねると、智弥子が怪訝そうにする。



「お祭りだってば」

「あ」



まずい、どうにもそのあたりの日まで意識が届かない。

バッグの中身を机の中に移しながら、うーんと考えた。



「遠慮しとくわ、ふたりで楽しんできなよ」

「林太郎と行くことになったの?」

「まだわかんないけど」

「他の人と行く可能性、あったりするわけ」

「いや、行くなら林太郎とだけど」



あらま、と智弥子が目を輝かせる。

違う違う、とそれを遮った。



「言われてんの、行くなら一緒に行こうって」

「あー、行こっさって」

「そうそう、行こっさって」

「そういや林太郎のお母さんて、どうしてんのかな」



何気なく出た話題に、ぎくりとした。



「今思えばさ、おばさんも無理にこっちの言葉にしてたんだね、向こうでは林太郎みたいな喋りなのかな」

「ああ、うん、そうだね」

「何よその上の空」

「この教室に来るのも今日が最後だと思うと」

「えっ」

「えっ」



思いがけず智弥子が、本気でショックを受けたような反応をしたので、慌てた。



「ごめん、冗談」

「…なんか意味あった、その冗談?」



私の頭の中を疑うように、眉をひそめる。

ごめん、ともう一度謝った時、予鈴が鳴った。